野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分。あつしはもう、腹が立つて、腹が立つて」 八五郎は格子をガタピシさせると、挨拶は拔きの、顎を先に立てて、斯う飛び込んで來るのでした。 「頼むから後を締めてくれ。野良犬がお前と一緒に入つて來るぢやないか」 錢形平次は、不精らしく頭をあげました。相變らず三文植木を眺めながら、椽側に寢そべつて、粉煙草をせゝつて居る、閑居の姿です。 「それが親分、いつもと違つて、今日は本當に腹を立てましたぜ」 「果し眼になると、お前でも少しは怖いよ。次第によつては、達引いてやらないものでもないが、一體いくらぐらゐ欲しいんだ」 「何んです、それは?」 「財布の紐が懷からはみ出して、その上あわてて居るところを見ると、その邊で飮んだ末、割前勘定が拂へなくて、友達に何んか嫌なことを言はれたんだらう」 平次はニヤリニヤリと、シヤーロツク・ホームズ見たいなことを言ふのでした。 「圖星と言ひてえが、そいつは大違ひだ」 「さては何處かの新造つ子を口説いて、彈かれたのかな」 「そんな間拔けな話ぢやありませんよ。腹が立つてたまらねえ話といふのは斯うですよ、親分」 「まア坐れ。突つ立つての話ぢや、立つた腹の寢かしやうはねえ」
野村胡堂
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