野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「八、居るかい」 向う柳原、七曲の路地の奧、洗ひ張り、御仕立物と、紙に書いて張つた戸袋の下に立つて、平次は二階に聲を掛けました。よく晴れた早春のある朝、何處かで、寢呆けた雄鷄が時をつくつて居ります。 「誰だえ、人を呼捨てにしやがつて、戸袋の蔭から出て、ツラを見せろ」 八五郎の長んがい顎が二階の窓へ出ると、滿面に朝陽を浴び乍ら、眩しさうに怒鳴るのです。 「大層な見識だな、八」 「あ、親分ですかえ、こいつはいけねえ、又町内の餓鬼大將が、作り聲でからかつてゐるのかと思つて、――」 八五郎は面喰つて、階子段を二つづつ飛降りて來ました。 「本所の二つ目まで附き合はねえか」 「何處まででも附き合ひますよ」 「それぢや大急ぎで朝飯を濟ましてくれ、此處で待つて居るから」 平次はさゝやかな四つ目垣にもたれて、芽を吹いたばかりの貧乏臭い草花などを眺めて居ります。 「それには及ぶものですか、朝飯なんざ、昨日も喰ひましたぜ」 「あんな野郎だ、――面は洗つたことだらうな」 「それはもう、鹽磨きで、水の使ひやうが荒過ぎるつて、大家さんから小言をくひましたよ、何しろ若くて獨り者で、良い男だ」 「呆れた野郎だ」 「親
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