野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分、良いお天氣ですね――これで金さへありや――」 薫風に懷ろを膨らませて、八五郎はフラリと入つて來ました。相變らず寢起の良ささうなのんびりした顏です。 「お早う、天氣が續くと、懷ろの方も空つ尻らしいな」 「お察しの通り、四五日はお濕りにもありつきませんよ。いよ/\料簡を入れ替へて――」 「まさか、泥棒を働く氣になつたわけぢやあるまいな」 「それは大丈夫で。泥棒なら縛るのが役目で、あつしの考へたのは、金貸しですよ。こいつは、義理人情さへ考へなきや、隨分儲かりさうですぜ」 「成程良い料簡だが、お前には出來ないよ。第一、元手があるまい」 「成程、そこまでは氣がつかなかつた」 「その代り義理人情があり過ぎる」 「ちげえねえ。あの妓もさう言ひましたよ」 などと、二人とも良い心持なものです。 「ところで、麹町九丁目の騷ぎはどうなつたんだ」 「そのことですよ、――あの邊は番町が近いから、小つ旗本と安御家人の巣だ」 「言ふことが荒つぽいな。もう少し丁寧にものを言へ」 「旗本や御家人の粒の小さいのには、工面のよくねえのが多いから、こつそり繁昌してゐるのは、質屋と金貸しだ。大きいのは九丁目の鍵屋金右衞
野村胡堂
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