野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「へツ、へツ、へツ、親分」 ある朝、八五郎が箍の外れた桶見たいに、笑ひながら飛び込んで來ました。九月もやがて晦日近く、菊に、紅葉に、江戸はまことに良い陽氣です。 「挨拶も拔きに、人の家へ笑ひ込む奴もねえものだ。少しは頬桁の紐を引締めろよ、馬鹿々々しい」 平次は、精一杯に不機嫌な顏を見せながらも、實はこの二三日、八五郎を待ち構へて居たのです。八が來てくれないと、良いニユースも入らず、平次の活動もきつかけがなくて、手につかない樣に、その心持は、連れ添ふ戀女房のお靜には、わかり過ぎるほど、よくわかつて居ります。試しに、あの佛頂面を、ちよいと突いてやつたら、顏の造作を崩して、笑ひ出すに違ひありません。 「でも、こいつは、親分だつて笑ひますよ。あつしが三日も來なかつたわけ、見當はつきますか、親分」 「いやにニヤニヤして、笑ひの止まないところを見ると、新色でも出來たか。――人の戀路を邪魔する氣はねえが、お前のお膝もとの土手に陣を敷いてるのは止せよ。鼻を取拂はれたひにや、好い男の恰好が付かねえ」 「そんな、氣障な話ぢやありませんよ。あつしはこの三日の間、金掘りに夢中だつたんで」 「ハテね、江戸の眞ん
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