野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
No translation yet. Request one to move it up the queue.
野村胡堂 · Japanese
First paragraph preview
Original (Japanese)
いつものやうに、この話は、八五郎の早耳帳から始まります。 「ところで親分」 「何が『ところで』なんだ、藪から棒に」 棚の落ちたのも吊れないやうな、不器用な平次が、唐紙の穴を繕いながら、鳴り込むやうに入つてくる八五郎を迎へました。片襷――それは女房のお靜に、袂へ糊がつくからとこぼされて、お靜自身のを拜借した赤いの。なか/\に甲斐々々しい姿ですが、脂さがりの哺へ煙管、これも女房をビクビクさせながらの剃刀使ひは、どう考へても器用な手つきではありません。 「錢形の親分が、唐紙の繕ひをしてゐるんだから、天下靜謐にきまつてゐるぢやありませんか、そんなに暇で/\しやうがないなら、ちよいと智惠を貸して下さいよ――ところで――と來るわけで」 「話は順序を立てなくちやわからないよ、――ところで――どうしたんだ」 平次は向き直つて、煙管をポンと叩きました。まだ剃刀は持つたまゝです。 「危ねえな、どうも。その剃刀が氣になつて、あつしの智惠は人見知りをするから、話の繼ぎ穗を忘れてしまひましたよ」 「だから、八さん、そんな危ない細工を止めて下さいな。御自分の顏も當れない人なんですから、何處か切りはしないかと、宜い
野村胡堂
Translation status
WaitingLog in to request a translation.
Other books by this author
Frequently asked questions
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
Free to read
Start reading immediately — no signup required. Create a free account for more books and features.