野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「へツへツ、へツへツ、隨分間拔けな話ぢやありませんか」 ガラツ八の八五郎が、たがが外れたやうに笑ひながら、明神下の平次の家に笑ひ込むのです。 世間はまだ松が取れたばかり、屠蘇の香りがプンプンとして居やうといふ時ですから、笑ひながら來る分には、腹も立ちませんが、それにしても、かう不遠慮にやられては、御近所の衆が膽をつぶします。 「八の野郎がまた、ゲラゲラ笑ひながら舞ひ込んで來たやうだ。火鉢の中へ唐辛子でも燻して置け」 平次は苦々しく舌打をしますが、實は久しく顏を見せなかつた八五郎を、心の中では待ち焦れてゐたのです。 「それには及びませんよ。――可笑しいの可笑しくねえの――つて、へツへツ」 「呆れた野郎だ。挨拶もせずに、笑つてやがる」 「相濟みません。尤も、元日早々御年始には來た筈で」 「挨拶は年に一度で濟む氣で居やがる。――何がそんなに可笑しいんだ。俺はもう、腹が立つて、腹が立つてたまらねえが」 「まだ正月だといふのに、何をそんなに腹を立てるんです。あつしはもう、面白くて可笑しくて」 「俺はまた癪にさはることばかりだよ。暮に拂へなかつた店賃を、三つまとめて大家のところへ持つて行くと、苦し
野村胡堂
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