林芙美子
林芙美子 · Japanese
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林芙美子 · Japanese
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Original (Japanese)
濡れた葦 林芙美子 1 女中にきいてみると、こゝでは朝御飯しか出せないと云ふことで、ふじ子はがつかりしてしまつた。子供たちは、いかにも心細さうにあたりをながめてゐる。ふじ子はひよいとしたら、丼物でもとつてもらへるかも知れないと、女中に、何か食べものを取りよせてもらへるかときいてみた。 「さうですねえ、お蕎麥か、親子丼ぐらゐのとこでしたら‥‥」 「ぢやア、親子丼とうどんかけを一つづつ取つて下さいませんか」 女中が階下へおりてゆくと、ふじ子は暑いので帶をといた。障子をあけると、ふつと椎の木のむせるやうな匂ひが流れてきた。 「いま、おいしい御飯が來るから待つてゐらつしやい‥‥」 ふじ子は、子供たちの疲れた顏を見ると、冷い手拭で二人の顏を拭いてやりたいとおもひ、廊下へ出て洗面所を探した。廊下のつきあたりが窓になり、そこから、電車通の賑やかなネオンサインが見える。表は西洋館まがひで、ペンキで新しさうに塗りたてたこの旅館も、なかへはいつてみると古ぼけた造作で、新宿の賑やかな通りに、こんな古めかしい旅館があるとはおもへないくらゐだつた。 もう遲いので、女中が蒲團をかゝへて梯子段をあがつて來た。ふじ子
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