Vol. 2May 2026

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14,981종 중 4,272종 표시

京都帝国大学(十四行詩)

槙村浩

十二の仮面のような頭蓋時計。肩を垂れ硬張った淫売婦のような白い建物。塀。涸れたレプラの血行路のように交叉する国道白い上っ張りと黒服とが朝から晩までこの中え出入りする彼等はもっとも丁寧に挨拶し、町並の看板のように生真面目であるそして彼等はドルメンの淫売窟えぞろ/″\入って行く傍の板壁には次の青札が懸っている――健康第一! 彼等は出来るだけずぼらに臓腑のめん/\

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京都のごりの茶漬け

北大路魯山人

京都のごりの茶漬け 北大路魯山人 京都のごりは加茂川に多くいたが、今はよほど上流にさかのぼらないといないようである。桂川では今でもたくさん獲れる。ごりは浅瀬の美しい、水の流れる河原に棲息する身長一寸ばかりの小ざかなである。 ごりといっても分らない人は、はぜのような形のさかなと思えばいい。腹に鰭でできたような吸盤がついていて、早瀬に流されぬよう河底の石に吸いつ

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京阪聞見録

木下杢太郎

京阪聞見録 木下杢太郎 予も亦明晩立たうと思ふ。今は名古屋に往く人を見送る爲めに新橋に來てゐるのだ。待合室は發車を待つ人の不安な情調と煙草の烟とに滿たされて居る。 商標公報といふ雜誌の綴を取り上げて見る。此に予は一種の實用的な平民藝術を味ふ事が出來て大に面白かつた。殺鼠劑の商標に猫が手で涙を拭つて居る圖は見覺えのあるものであるが、PARK 公園などと云ふ石鹸

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京鹿子娘道成寺

酒井嘉七

京鹿子娘道成寺 酒井嘉七 序 筆者が、最近、入手した古書に、「娘道成寺殺人事件」なるものがある。 記された事件の内容は、絢爛たる歌舞伎の舞台に、『京鹿子娘道成寺』の所作事を演じつつある名代役者が、蛇体に変じるため、造りものの鐘にはいったまま、無人の内部で、何者かのために殺害され、第一人称にて記された人物が、情況、及び物的証拠によって、犯人を推理する――という

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亮の追憶

寺田寅彦

亮の追憶 寺田寅彦 亮の一周忌が近くなった。かねてから思い立っていた追憶の記を、このしおに書いておきたいと思う。 亮は私の長姉の四人の男の子の第二番目である。長男は九年前に病死し、四男はそれよりずっと前、まだ中学生の時代に夭死した。昨年また亮が死んだので、残るはただ三男の順だけである。順はとくにいでて他家を継いでいる。それで家に残るは六十を越えた彼らの母と、

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きつねをおがんだ人たち

小川未明

村に、おいなりさまの小さい社がありました。まずこの話からしなければなりません。 昔、一人の武士が、殿さまのお使いで、旅へ出かけました。思いのほか日数がかかり、用がすんで、帰途につきましたが、いいつけられた日までに、もどれそうもありませんでした。そのうち、あいにく雪がふりだしました。北国の冬の天気ほど、あてにならぬものはありません。たちまち雪はつもって、道をふ

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なつかしまれた人

小川未明

町の運輸会社には、たくさんの人たちが働いていました。その中に、勘太というおじいさんがありました。まことに、人のいいおじいさんであって、だれに対してもしんせつであったのであります。 若いものたちがいい争ったりしたときは、いつもおじいさんが中にはいって仲裁をしました。 「まあ、すこしのことでそんなに怒るものでない。ここに働いているものは、いわば兄弟も同じことだ。

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おおかみと人

小川未明

未開な小さな村がありました。町へいくには、山のすそ野を通らなければなりませんでした。その間はかなり遠く三里もありまして、その間には、一軒の人家すらなかったのであります。 春から夏にかけては、まことに景色がようございましたけれども、秋の末から冬にかけては、まったくさびしゅうございました。けれど、その村の人は、町までいくには、どうしてもその高原を通らなければなら

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イタリア人

寺田寅彦

今日七軒町まで用達しに出掛けた帰りに久し振りで根津の藍染町を通った。親友の黒田が先年まで下宿していた荒物屋の前を通った時、二階の欄干に青い汚れた毛布が干してあって、障子の少し開いた中に皺くちゃに吊した袴が見えていた。なんだかなつかしいような気がした。黒田が此処に居たのはまだ学校に居た頃からで、自分はほとんど毎日のように出入りしたから主婦とも古い馴染ではあるが

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その人

小山清

連れられてきた私を見てその人は云った。 「なんだ、またかえってきたのか。いくじなしめ。」 私はその時鈍く笑っただろうか。その人が言葉をかけてくれたのには、それでホッとする気持があったのだ。かえりたくないところへかえされた、私はそうした心でいた。 私は中ほどの場所に仕事の席をあてがわれた。私のすぐうしろのへんにはさきの日の馴染みの者達がいた。皆なにかと私に話し

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その人らしい人が好き

宮本百合子

その人らしい人が好き 宮本百合子 美とか、醜とかいうことは一様には云われません。美しいと思うのは容姿美ということより、その人から受ける感じに依って云われるものだと思います。 私は何よりも凡ての感じから観て「その人らしい」という人がいいと思います。たいして美人でなくとも、さっぱりとした感じの人が綺麗に見えます。外から塗りつけたような技巧の上の美よりも、自然に現

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人体解剖を看るの記

海野十三

人体解剖を看るの記 海野十三 僕は最近、はからずも屍体解剖を看るの機会を持った。僕の友人に、慶応の生理学の先生である林髞博士というのがあるが、この林博士は前から僕に屍体解剖を見物するように薦めてくれたのであった。僕はもちろん見たいには見たかったのだ。しかし困ったことに、いくら見たくとも、それは芝居や犬の喧嘩を見るように簡単にはゆかないのである。つまり胆力とい

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ディズニーの人と作品

中谷宇吉郎

昭和三十年の話であるが、シカゴの近郊に住んでいたころ、ハリウッドの映画賞授賞式の模様をテレビで見たことがある。その時、ディズニーは四つの賞牌をもらった。 広い豪華な会場が、映画関係の人たちでいっぱいになっている。半分以上は、美しいドレスを着飾った女優たちで、まるで花園のような風景である。その中で、いろいろな女優や男優の名前が、次々と呼び上げられる。そのつど、

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人口論 00 訳序/凡例/解説/序言/前書

マルサストマス・ロバート

訳序 マルサス『人口論』の第一版と第二版との間に大きな差異があることは、どの本にも書いてあり誰でも知っている。しかしその第二版以後がどうかということになると、余りはっきりしていないようである。しかし実際は、『人口論』はマルサスの生きている間に六版を重ねており、その各々にはいずれも訂正または増補が行われているのであって、同一の版本は一つもないのである。もちろん

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人を呪わば

国枝史郎

「あの、もしもし」 と女の声。 振り返って見ると白い物! 女が軒下で招いている。 午前三時! 深夜である。 「え、お嬢さん、何かご用で?」 一條弘、若き新聞記者。年齢二十四。慇懃に訊く。 場所は大阪。川口あたり。―― 「一緒に連れてって下さいよ」 「だが、一体どうしたんで?」 「お願いですよ。……妹だと云ってね」 「ははん」と一條感付いた。こん畜生め! 地獄

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その人の四年間 婦人民主クラブの生い立ちと櫛田ふきさん

宮本百合子

一 一九四三年だったかそれともその翌年だったか、ある夏のことであった。ある晩わたしは、中野鷺宮の壺井栄さんの家の縁側ですずんでいた。そのころ、わたしにとって栄さんの家は生活の上になくてはならない休みどころであった。手拭の新しいので縫った小さい米袋に、ひとにぎりの米を入れ、なにかありあわせたおかずがあればそれも買物籠に入れて栄さんのところに出かけた。そして栄さ

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人の国

豊島与志雄

人の国 豊島与志雄 久保田さんは、六十歳で某大学教授の職を辞して以来、いつしか夜分に仕事をする習慣がついてしまった。夜分に仕事をするのは、必ずしも盗人や小説家のみに限ったことではない。久保田さんが従事していた仕事は、人類理想史という尨大な著述で、天上の神話的楽園から地上の無政府的共産主義の理想郷に至るまで、人間の各種の理想を歴史的に叙述することであった。その

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人外魔境 01 有尾人

小栗虫太郎

フランスの自動車会社シトロエンの探検隊――。これは、米国地理学協会ほどの大規模なものではないが、とにかく一営利会社としてはなかなかの仕事をしている。最初は、アフリカのサハラ沙漠を牽引車で突破し、続いて、ペルシア、中央アジアを経てペキンまで、無限軌道をうごかしていった大旅行隊をさえだしている。 さて、その三回目の計画であるが、すでに選定もすみ雨期あけを待つばか

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人外魔境 03 天母峰

小栗虫太郎

わが折竹孫七の六年ぶりの帰朝は、そろそろ、魔境、未踏地の材料も尽きかけて心細くなっていた私にとり、じつに天来の助け舟のようなものであった。では、それほど私を悦ばせる折竹とはいかなる人物かというに、彼は鳥獣採集人としての世界的フリーランサーだ。この商売の名は、海南島の勝俣翁によってはじめて知った方もあろうが、日本はともかく、海外ではなかなかの収入になる。ことに

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人外魔境 05 水棲人

小栗虫太郎

折竹孫七が、ブラジル焼酎の“Pinga”というのを引っさげて、私の家へ現われたのが大晦日の午後。さては今日こそいよいよ折竹め秘蔵のものを出すな。このブラジル焼酎を飲りながらアマゾン奥地の、「神にして狂う」河の話をきっとやるだろう……と私は、しめしめとばかりに舌なめずりをしながら、彼の開口を待ったのである。 ところが、その予想ががらっと外れ、意外や、題を聴けば

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人外魔境 08 遊魂境

小栗虫太郎

いよいよ本篇から、魔境記も大ものばかりになってくる。まず、その手初めが“Ser-mik-suah”グリーンランド中部高原の北緯七十五度あたり、氷河と峻険と猛風雪と酷寒、広茫数百の氷河を擁する未踏地中のそのまた奥。そこに、字義どおりの冥路の国ありという、“Ser-mik-suah”は極光下の神秘だ。では一体、その「冥路の国」とはどういうところか。 まず、誰しも

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人外魔境 10 地軸二万哩

小栗虫太郎

――折竹氏、中央亜細亜へゆく。世界の屋根、パミール高原中の大魔境「大地軸孔」をさぐるため、近日ロンドンを出発、英印連絡空路により、アフガニスタンのグワダールへ赴く予定。 とこんな記事が、ロンドン中の新聞を賑わしたのが、十日ほどまえのこと。英帝皇后ご同列の米大州ご訪問や、アラビアオーマン国の王子ご新婚などに併せ……ともあれ、スペースを食った大物記事の一つ。それ

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よそ人のあざむが如く

ダンテアリギエリ

よそ人のあざむが如く、君も亦あざみ給ふか 我君よ、君はた知らじ、覺りえじ、世に不思議にも 俤のかくは移ろひ、變りたる深きいはれを、 そは君がたへなる色を仰ぎ見し惑ひ心地ぞ。 我心、君もし知らば、『憐愍』のいかで堪ふべき かうやうのつらき恥目に我心惱ましむるぞ。 見よ、「愛」は君います邊、のびらかに心のどけく、 廣大の無邊力をぞ安んじて振ひ行ふ。 それ茲に怯え

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人妻

永井荷風

住宅難の時節がら、桑田は出来ないことだとは知つてゐながら、引越す先があつたなら、現在借りてゐる二階を引払ひたいと思つて見たり、また忽気が変つて、たとへ今直ぐ出て行つて貰ひたいと言はれやうが、思のとゞくまではどうして動くものか、といふやうな気になつたりして、いづれとも決心がつかず、唯おちつかない心持で其日其日を送つてゐた。それも思返すと半年あまりになるのである

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