Vol. 2May 2026

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Biblioteca de conocimiento mundial de dominio público

14,981종 중 11,112종 표시

盆踊り

田畑修一郎

盆踊り 田畑修一郎 東京に住んで十一年になるが、ずつと郊外だつたから私は東京の夏祭がどんなものかまるで知らない。私には東京の夏は暑くて殺風景だ。ごくまれに、手拭と黒褌とを入れた袋をぶら下げて神宮のプールに出かけ、歸りに新宿の不二屋あたりで濃い熱い珈琲をのんだり、冷房裝置のある映畫館へ涼みがてら出かけたりするのが、東京の夏の樂しみといへば樂しみだつた。 しかし

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盆踊りと祭屋台と

折口信夫

盆踊りと祭屋台と 折口信夫 一 盂蘭盆と魂祭りと 盆の月夜はやがて近づく。広小路のそゞろ歩きに、草市のはかない情趣を懐しみはするけれど、秋に先だつ東京の盂蘭盆には、虫さへ鳴かない。年に一度開くと言はれた地獄の釜の蓋は一返では済まなくなつた。其に、旧暦が月齢と名を改めてからは、新旧の間を行く在来りの一月送りの常識暦法が、山家・片在所にも用ゐられるやうになつたの

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盆踊りの話

折口信夫

盆踊りの話 折口信夫 一 盆の祭り(仮りに祭りと言うて置く)は、世間では、死んだ聖霊を迎へて祭るものであると言うて居るが、古代に於て、死霊・生魂に区別がない日本では、盆の祭りは、謂はゞ魂を切り替へる時期であつた。即、生魂・死霊の区別なく取扱うて、魂の入れ替へをしたのであつた。生きた魂を取扱ふ生きみたまの祭りと、死霊を扱ふ死にみたまの祭りとの二つが、盆の祭りな

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盈虚

中島敦

盈虚 中島敦 衞の靈公の三十九年と云ふ年の秋に、太子が父の命を受けて齊に使したことがある。途に宋の國を過ぎた時、畑に耕す農夫共が妙な唄を歌ふのを聞いた。 既定爾婁豬 盍歸吾艾 牝豚はたしかに遣つた故 早く牡豚を返すべし 衞の太子は之を聞くと顏色を變へた。思ひ當ることがあつたのである。 父・靈公の夫人(といつても太子の母ではない)南子は宋の國から來てゐる。容色

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盗まれた手紙

ポーエドガー・アラン

Nil sapienti odiosius acumine nimio. (叡智にとりてあまりに鋭敏すぎるほど忌むべきはなし) セネカ(1) パリで、一八――年の秋のある風の吹きすさぶ晩、暗くなって間もなく、私は友人C・オーギュスト・デュパンと一緒に、郭外サン・ジェルマンのデュノー街三十三番地四階にある彼の小さな裏向きの図書室、つまり書斎で、黙想と海泡石のパ

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盗まれた手紙の話

坂口安吾

ある朝、兜町のさる仲買店の店先へドサリと投げこまれた郵便物の山の中で、ひときは毛色の変つた一通があつた。たいへん分厚だ。けれども証券類や印刷物とは関係のない様子に見える。 ペン字のくせに一字一画ゆるがせにしない筆法極めて正確な楷書で、なにがし商店御中とある。で裏を返してみると、これまた奇妙である。 なにがし区なにがし町――といつても、つい先年まではさしづめ武

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盗聴者

ブラックウッドアルジャーノン

九月四日――ロンドン中を歩き回った末、なんとか年収――百二十ポンド――に見合う下宿を発見した。実のところ水道類のない二部屋で、古く崩壊寸前の建物の中だ。だがP――プレイスから石を投げれば届く距離で、極めて上品な街にある。下宿代は年に二十五ポンド。ほんの偶然からこの下宿を見つけたのは、もう駄目かと思い始めた矢先だった。偶然は単なる偶然であり詳述するに及ばない。

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盗難

佐藤垢石

盗難 佐藤垢石 一 私は、娘を盗まれたことがある。そのときのやるせなさと、自責の念に苛まれた幾日かの辛さは、いまでも折りにふれてわが心の底によみがえり、頭が白らけきる宵さえあるのである。 結婚後、五、六年になるが不幸にも、私ら夫妻は子宝に恵まれなかった。しかし、私らはそれを悩みとも、不幸とも思っていなかった。そして、子供のない安易の生活を楽しんでいるのである

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監獄署の裏

永井荷風

われは病いをも死をも見る事を好まず、われより遠けよ。 世のあらゆる醜きものを。――『ヘッダ ガブレル』イブセン ――兄閣下 お手紙ありがとう御在います。無事帰朝しまして、もう四、五カ月になります。しかし御存じの通り、西洋へ行ってもこれと定った職業は覚えず、学位の肩書も取れず、取集めたものは芝居とオペラと音楽会の番組に女芸人の寫真と裸体画ばかり。年は已に三十歳

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監獄部屋

羽志主水

監獄部屋 羽志主水 (一) 同じ持場で働いて居る山田という男が囁いた。 「オイ、何でもナ、近けえ内に政府の役人の良い所が巡検に来るとヨ」 「エッ、本当かイ夫りゃア、何時だってヨ」 「サア、其奴ア判ら無えがナ、今度ア今迄来た様な道庁の木ッ葉役人たア違うから、何とか目鼻はつけて呉れるだろう、何時も何時も胡麻化されちゃア返るんだが、今度ア左様は往くめエ、然し之で万

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目撃者

国枝史郎

ミラは何うしても眠れなかった。 夜も更けて真夜中を少し廻った頃だったが、二階では彼女の息子のウィリアムと嫁のエフィが先刻から喧嘩を続けているので、ミラは一時間余りも床の中で眼をぱちくりさせていた。彼女はウィリアムが腹を立てたが最後、手に負えぬことを知っているだけに余計心配でならなかった。彼女の耳にはウィリアムが床をばたばたさせながら、切りに喚いている声や、エ

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ひとつ目、ふたつ目、三つ目

グリムヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール

昔 むかし、ひとりの女の人がいました。この人には、三人の娘がありました。 いちばん上の娘は、ひたいのまんなかに、目がひとつしかありませんでした。それで、みんなから、ひとつ目、とよばれていました。 二番めの娘は、ふつうの人間とおなじように、ふたつの目をもっていました。それで、ふたつ目、とよばれていました。 いちばん下の娘は、目が三つありました。それで、三つ目、

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目に見えない怪物 ―能の現代化

加藤道夫

戰後になつてから餘り見なくなつてしまつたが、學生時代には僕も隨分足繁く能樂堂に通つたものだ。併し、正直に言ふと僕自身「能」の世界に入り込める樣になるには大分時間がかゝつた樣である。初めのうちは退屈で居眠りをしたりした覺えもある。ところが次第に「能」の魂みたいなものが分つて來た。いゝ能とつまらない能の區別がはつきり分つて來た。能も結局、曲と演者で、この二つがぴ

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目醒時計の憤慨

牧野信一

あしたはきつと五時に起きよう――と、また美智子さんは、堅く決心しました。あしたこそ大丈夫だ――と、更に美智子さんは、自分の胸に念をおしました。そして今年の春、叔父さんから貰つた大形の眼醒時計を書棚の上から取りおろして、ぴつたり朝の五時にベルをかけました。この時計は、ベヒーベンとか云ふ米国製の時計で、暗闇のなかでも指針と文字が青白い光を放つて、はつきりと読めま

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目黒の寺

岡本綺堂

目黒の寺 岡本綺堂 住み馴れた麹町を去って、目黒に移住してから足かけ六年になる。そのあいだに『目黒町誌』をたよりにして、区内の旧蹟や名所などを尋ね廻っているが、目黒もなかなか広い。殊に新市域に編入されてからは、碑衾町をも包含することになったので、私のような出不精の者には容易に廻り切れない。 ほか土地はともあれ、せめて自分の居住する区内の地理だけでも一通りは心

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盲人独笑

太宰治

盲人独笑 太宰治 よる。まつのこのまより月さやかにみゆると。ひとの申さるるをききてよめる。 はなさきて。ちりにしあとの。このまより すすしくにほふ。つきのかけかな まだ。ほかにも。あるなれど。ままにしておけ。 ――葛原勾当日記―― はしかき 葛原勾当日記を、私に知らせてくれた人は、劇作家伊馬鵜平君である。堂々七百頁ちかくの大冊である。大正四年に、勾当の正孫、

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盲目

島木健作

盲目 島木健作 その日の午後も古賀はきちんと膝を重ねたまゝそこの壁を脊にして坐つてゐた。本をよむことができなくなつてからといふもの、古賀には一日ぢゆうなにもすることがないのだ。終日ぽつねんとして暗やみのなかにすわつてゐるばかりである。時々彼は立上つて房のなかを行つたり來たりする。わづか三歩半で向ふの壁につきあたるやうな房のなかなのだ。一分間に十往復とすると、

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直訴状

田中正造

謹奏 田中正造 ※ 草莽ノ微臣田中正造誠恐誠惶頓首頓首謹テ奏ス。伏テ惟ルニ臣田間ノ匹夫敢テ規ヲ踰エ法ヲ犯シテ 鳳駕ニ近前スル其罪実ニ万死ニ当レリ。而モ甘ジテ之ヲ為ス所以ノモノハ洵ニ国家生民ノ為ニ図リテ一片ノ耿耿竟ニ忍ブ能ハザルモノ有レバナリ。伏テ望ムラクハ陛下深仁深慈臣ガ[狂→至]愚ヲ憐レミテ少シク乙夜ノ覧ヲ垂レ給ハンコトヲ。 伏テ惟ルニ東京ノ北四十里ニシテ

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相対性原理側面観

寺田寅彦

相対性原理側面観 寺田寅彦 一 世間ではもちろん、専門の学生の間でもまたどうかすると理学者の間ですら「相対性原理は理解しにくいものだ」という事に相場がきまっているようである。理解しにくいと聞いてそのためにかえって興味を刺激される人ももとよりたくさんあるだろうし、また謙遜ないしは聞きおじしてあえて近寄らない人もあるだろうし、自分の仕事に忙しくて実際暇のない人も

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相当読み応えのあったものは?

宮本百合子

相当読み応えのあったものは? 宮本百合子 最近よんだものの中で(一)「強制収容所の十三ケ月」ヴォルフガング・ラングホフ著・舟木重信、池宮秀意共訳(創芸社)(二)「巣の中の蜘蛛」千田九一訳(宝雲社)などからつよく印象づけられました。(一)はナチスの非人間的な強圧に対してドイツの民主的な人々がどんなにたたかったかということについて感銘しました。日本の政府はこの強

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相撲

寺田寅彦

一月中旬のある日の四時過ぎに新宿の某地下食堂待合室の大きな皮張りの長椅子の片すみに陥没して、あとから来るはずの友人を待ち合わせていると、つい頭の上近くの天井の一角からラジオ・アナウンサーの特有な癖のある雄弁が流れ出していた。両国の相撲の放送らしい。野球の場合とちがって野天ではなく大きな円頂蓋状の屋根でおおわれた空間の中であるだけに、観客群衆のどよみがよくきこ

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相撲と力学

寺田寅彦

力学というのは物体に作用する力の釣り合いや力の作用によって起る物体の運動を数学的に論ずる六かしい学問である。天地万有が活きて動いて変化している間はこの力学の応用はあらゆる学術技芸に一日も欠く事は出来ぬ。相撲は人間の体力の活技で、一方から見れば霊妙な複雑な器械の戦いである、いずれにしても運用する力はいわゆる器械力で、力の作用する目的物は質量を有する物体だから、

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相撲の放送

坂口安吾

相撲の放送 坂口安吾 夏場所が近づいた。ふだん放送をきかない人で、あれだけはスヰッチをいれるといふ人もある。ところが、その人にきいてみたら、放送はきいてゐるが、本場所は見たことがないのだと言ふ。放送自体に独特の魅力があるらしい。 相撲放送の独特な魅力は、立会に十分間の無駄な余裕がある点ではないかと思ふ。相撲もいゝが立会が長くて、と人は一概に言ふけれども、畳の

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相聞の発達

折口信夫

相聞の発達 折口信夫 一 木梨軽ノ太子の古い情史風のばらっどの外に、新しい時代に宣伝せられたと思はれる悲しい恋語りが、やはり巡遊伶人の口から世間へちらばり、其が輯録せられて万葉にある。一つは宅守相聞である。今一つは乙麻呂流離の連作である。時代が新しいから真の創作であらう。そして不遇な男女が、哀別の涙をさへ、人に憚つて叫び上げたものゝ様に思はれ、我々をも動す強

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