Vol. 2May 2026

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14,981종 중 14,568종 표시

顎十郎捕物帳 18 永代経

久生十蘭

角地争い 六月十五日の四ツ半(夜の十一時)ごろ、浅草柳橋二丁目の京屋吉兵衛の家から火が出、京屋を全焼して六ツ(十二時)過ぎにようやくおさまった。 隣家は『大清』というこのごろ売りだしの大きな湯治場料理屋だが、この日はさいわいに風のない晩だったのと水の手が早かったのとで、塀を焼いただけで助かったが、京屋のほうは思いのほかに火のまわりが早かったと見えて、吉兵衛は

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顎十郎捕物帳 19 両国の大鯨

久生十蘭

二十六夜待 七月二十六日は二十六夜待で、芝高輪、品川、築地の海手、深川洲崎、湯島天神の境内などにはほとんど江戸じゅうの老若が日暮まえから押しだして月の出を待つ。 なかんずく、品川はたいへんな賑い。名のある茶屋、料理屋の座敷はこの夜のためにふた月も前から付けこまれる。 海にむいた座敷を打ちぬいてだれかれなしの入れごみ。衝立もおかず仕切もなく、煤払いの日の銭湯の

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顎十郎捕物帳 20 金鳳釵

久生十蘭

花婿 二十四日の亀戸天神様のお祭の夜からふりだした雨が、三十一日になっても降りやまない。 神田佐久間町の焙烙長屋のドンづまり。古井戸と長屋雪隠をまむかいにひかえ、雨水が溝を谷川のような音をたてて流れる。風流といえば風流。 火鉢でもほしいような薄ら寒い七ツさがり。火の気のない六畳で裸の脛をだきながらアコ長ととど助がぼんやり雨脚を眺めているところへ、油障子を引き

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顎十郎捕物帳 21 かごやの客

久生十蘭

お姫様 「なんだ、なんだ、てめえら。……客か、物貰いか、無銭飲か。ただしは、景気をつけに来たのか。店構えがあまり豪勢なんで、びっくりしたような面をしていやがる。……やいやい、入るなら入れ、そんなところに突っ立ってると風通しが悪いや」 繩暖簾をくぐったところをズブ六になった中間体が無暗にポンポンいうのを、亭主がおさえておいて、取ってつけたような揉手。 「おいで

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顎十郎捕物帳 22 小鰭の鮨

久生十蘭

はやり物 谷中、藪下の菊人形。 文化の末ごろからの流行で、坂の両がわから根津神社のあたりまで、四丁ほどのあいだに目白おしに小屋をかけ、枝を撓め花を組みあわせ、熊谷や敦盛、立花屋の弁天小僧、高島屋の男之助。虎に清正、仁田に猪。鶴に亀、牡丹に唐獅子。竜宮の乙姫さま。それから、評判の狂言を三段返し五段返しで見せる。人形の首は人気役者の顔に似せ、衣裳は、赤、白、紫、

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顎十郎捕物帳 23 猫眼の男

久生十蘭

府中 「……すみませんねえ。これじゃ冥利につきるようで身体がちぢみます」 「やかましい、黙って乗っておれというのに」 駕籠に乗っているのは、ついこのあいだまで顎十郎の下まわりだった神田鍋町の御用聞、ひょろりの松五郎。 かついでいるほうは、もとは江戸一の捕物の名人で、今はただの駕籠屋。仙波阿古十郎あらためアコ長。相棒は九州の浪人くずれで雷土々呂進こと、とど助。

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顎十郎捕物帳 24 蠑螈

久生十蘭

朝風呂 阿古十郎ことアコ長。もとは北町奉行所に属して江戸一の捕物の名人。ひょんなこと役所をしくじって、今はしがない駕籠舁渡世。 昨夜、おそい客を柳橋まで送りとどけたのは九ツ半。神田まではるばる帰る気がなくなって深川万年町の松平陸奥守の中間部屋へころがりこみ、その翌朝。 朝からとの曇って、間もなくザッと来そうな空模様。怠け者のふたりのことだから、これをいい口実

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堀辰雄

路易はすぐ顏をぱあつと赤くした。 自分でもいやな癖だと思つてゐたけれど、どうしやうもないのであつた。何でもないのに「そら、また……」といふ氣がひよいとする。が、その時はもう遲い。見る見るうちに彼の頬は薔薇色になつてしまふ。同級生たちには「吸取紙」といふ綽名までつけられる。どうしてこんなんだらう。いやだなあと彼は悲しんでゐる。その癖、路易の毛髮と言つたら! そ

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岸田国士

顔 岸田國士 男 女 菅沼るい 京野精一 土屋園子 ある海浜の寂れたホテル 四月のはじめ。晴れた静かな夕刻。 舞台は、ホールを兼ねただゞつ広い日光室の一隅。――正面、硝子戸を距てて、やゝ遠く別棟の食堂が見え、左手は、庭の芝生へ降りる扉。右手、いつぱいに奥へあがる階段――二階は客室である。その階段の降り口から、右へ、玄関へ続く薄暗い別のホール。 窓ぎはに、整然

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高村光太郎

顔 高村光太郎 顔は誰でもごまかせない。顔ほど正直な看板はない。顔をまる出しにして往来を歩いている事であるから、人は一切のごまかしを観念してしまうより外ない。いくら化けたつもりでも化ければ化けるほど、うまく化けたという事が見えるだけである。一切合切投げ出してしまうのが一番だ。それが一番美しい。顔ほど微妙に其人の内面を語るものはない。性情から、人格から、生活か

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宮本百合子

顔 顔 宮本百合子 ルイザは、天気にも、教父にも、または夫のハンスに対しても、ちっとも苦情を云うべきことのないのは知っていた。 自分達位の身分の者で、村の誰があんな行届いた洗礼式を、息子に受けさせてやったろう。四月の第二日曜のその朝、天気は申し分のない麗らかさであった。暖い溶けるような日の色といい、爽やかな浮立つような微風といい。彼女は、ハンスと婚礼した時か

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あなたの顔

仲村渠

――琉球の墓を見たことがあるか。むしろ蟇の如き石室なり。また、一小孤城の如きも見るべし。高き丈余にあまり、みな蒼苔をおび、海に向ひて寂然たり。むかし、さる物持ちの翁ありて、己が墓に池を穿ち、蓮の花を植えたりと。―― 墓のなかに蓮の花をうえる 僕は一輪の薔薇を植ゑる 黒奴のやうにまつくらい体のなかに ああ 燐色の顔をうゑる。 ●図書カード

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あの顔

林不忘

あの顔 林不忘 一 六月の暑い日の午後、お久美は、茶の間にすわって、浮かない面持ちだった。そういえば、誰も気がつかなかったが、朝から不愉快そうにしていた。暑さのためばかりではないらしかった。綿雲のような重いものが、かの女のこころに覆いかぶさっているのだった。お久美は、この、何一つ不自由のない環境と思い合わせて、胸に手を置くといった気もちで、静かに、その原因が

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顔の椿事

原民喜

お仙の夫は今朝、橋から墜ちて溺れたが、救助されたのが早かったのでまだ助かりさうだった。手当は姑や隣りの人にまかせて置いて、お仙は町まで医者を迎へに走った。医者は後から直ぐ来ると云ふので、お仙はまた呼吸を切らせて山路を走った。すると家の近くの淫祠まで来たところで、隣りの主人とばったり出逢った。お仙は顔色を変へて唖者になった。隣りの主人はこれも二三秒唇を慄はせた

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顔を語る

宮本百合子

顔を語る 宮本百合子 どんなひとでも、はたからは、その人に似た人というものの話をきかされているだろうと思う。よく知っている者が、その似たというところの話されているのをきくと、案外、まるで似てもいないのに、とびっくりするようなこともある。私たちが互にひとの顔だちなどのどんな特徴をどうつかんでいるのかということは、一応はっきりしていそうでなかなかはっきり定ってし

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その願いを現実に 燁子さんへの返事として

宮本百合子

昨年のことであったか、それとも一昨年になるか、わたしはある婦人雑誌で思いがけない柳原子さんの文章をよんだ。そして深く心にきざみつけられた。その文章で、わたしははじめてさんが愛息香織さんに戦死されたことを知り、母としての子さんは香織さんの霊が不滅であることを信じずにはいられない思いであることを知ったのだった。 子さんが宮崎龍介氏との結婚を法律的に認めさせ、香織

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竹久夢二

風 竹久夢二 風が、山の方から吹いて来ました。学校の先生がお通りになると、街で遊んでいた生徒達が、みんなお辞儀をするように、風が通ると、林に立っている若い梢も、野の草も、みんなお辞儀をするのでした。 風は、街の方へも吹いて来ました。それはたいそう面白そうでした。教会の十字塔を吹いたり、煙突の口で鳴ったり、街の角を廻るとき蜻蛉返りをしたりする様子は、とても面白

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壺井栄

ふたりが世の常の男女らしく動けば、ことは平凡に運んだろうに、おたがいになにかしら少し足りないものがあって、なかなかそこまでゆかなかった。つまりふたりの間には長い年月にわたって手紙のやりとりが続きながら、若い男と女の間にあってしかるべき恋文のやりとりは一度もないという、ふしぎな間がらだったのだ。しかし、はたの者にはそう見えなかったらしい。 「修造の嫁は茂ちゃん

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風ばか

豊島与志雄

風ばか 豊島与志雄 一 ――皆さんは、人間の身体は右と左とまったく同じだと、思っていますでしょう。右と左とにそれぞれ、眼が一つ、耳が一つ、鼻が半分、口が半分、手が一つ、足が一つ……。まんなかから切ってみると、右と左とは、まったく同じように見えます。ところが、よくしらべてみると、ずいぶんちがっています。いくら神様でも、生きた人間の身体を、右と左とまったく同じに

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風はささやく

小川未明

高窓の障子の破れ穴に、風があたると、ブー、ブーといって、鳴りました。もう冬が近づいていたので、いつも空は暗かったのです。まだ幼年の彼は、この音をはるかの荒い北海をいく、汽船の笛とも聞きました。家から外へ飛び出して、独り往来に立っていると、風が、彼の耳もとへ、 「明日は、いいことがある。」と、ささやきました。 「そうだ、きっとお父さんが、明日帰っていらっしゃる

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風に乗って来るコロポックル

宮本百合子

風に乗って来るコロポックル 風に乗って来るコロポックル 宮本百合子 一 彼の名は、イレンカトム、という。 公平な裁きてという意味で、昔から部落でも相当に権威ある者の子に付けられる種類の名である。 従って、彼はこの名を貰うと同時に、世襲の少なからぬ財産も遺された。 そして、彼の努力によって僅かでも殖(ふ)やしたそれ等の財産を、次の代の者達に間違いなく伝えること

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風人録

坂口安吾

風人録 坂口安吾 一 有りうべからざる奇怪のこと この世には、とても有り得まいと思はれることが、往々有りうるのである。しかも奇妙なことには、さういふ事に限つて、さて実際行はれてみると、人々になんの注意も惹かず、不思議な思ひすら与へず、有耶無耶のうちに足跡もなく通過してしまふ。 先年、ある男が鉄道自殺をしようとして、驀進してきた貨物列車に向つて、走幅飛の要領で

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『風の便り』あとがき

太宰治

所收――「風の便り」「新郎」「誰」「畜犬談」「鴎」「猿面冠者」「律子と貞子」「地球圖」 昨年の夏に出版せられた創作集「千代女」の以後の作品を集めて、ただいま讀者にお贈りする。ペエジ數の都合で、「千代女」以前の作品も編入せざるを得なくなつて、心苦しいのであるが、いま此の機會に再讀なさつても、充分に新鮮の感じがするやうに、心掛けて編輯した筈である。 卷頭、約百枚

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風の便り

太宰治

風の便り 太宰治 拝啓。 突然にて、おゆるし下さい。私の名前を、ご存じでしょうか。聞いた事があるような名前だ、くらいには、ご存じの事と思います。十年一日の如く、まずしい小説ばかりを書いている男であります。と言っても、決して、ことさらに卑下しているわけではございません。私も、既に四十ちかくに成りますが、未だ一つも自身に納得の行くような、安心の作品を書いて居りま

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