神西清
神西清 · Jepang
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神西清 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
大海人は今日も朝から猟だつた。午ちかく、どこではぐれたのか伴の者もつれず、一人でふらりと帰つてくると、宮前の橿の木のしたで赤駒の歩みをとめた。 舎人の小黒が、あわてて駈けだしてきて、手綱をおさへる。そして何か言つた。 「ほう、嶋が? 多治比ノ嶋が来てゐるのか?」 大海人は、よくかげ口をきかれる例の神鳴り声を、小黒の禿げ頭のてつぺんへ浴びせかけると、ゆらりと地上へおり立つた。おそるおそる、といふよりは反射的に、両手をさしのべたもう一人の舎人に、まづ弓をわたす。それから肩のヤナグヒを解いてわたす。例によつて獲物はないから、ほかには何も渡すものはない。 それなり、泥のだいぶはねかかつた行籘を、人一倍ながい脛で蹴たてるやうにしながら、宮殿の廻廊をまはつて大海人はすがたを消した。 点々と、熊の歩いたやうな泥沓のあとが、柱廊の敷瓦のうへにつづいてゐる。その跡を追ふやうに、中途までついて来た舎人の小黒は、黒ぐろとしたその泥の色から、ふと春の香をかいだやうに思つた。 ことしはこの飛鳥の内そとにも、めづらしく雪が多かつた。殊につい十日ほどまへ、遠智の岡ノ上に新たにおこされたミササギに、宝ノ太后と、間人ノ
神西清
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