徳田秋声
徳田秋声 · Jepang
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徳田秋声 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
ステーシヨン前の旅館から、新聞社の人達によつて案内されて来たその宿は、氷川の趣味性から言つて、ちよつと気持の好いものであつた。それは其の宿屋が、近代式旅館と言ふには少し古風であつたと同時に、かいなでの田舎の旅籠屋とちがつた、古い都会らしい趣味の頽廃気分があつたからで、彼は庭の植込みのあひだを潜つて、飛石づたひに、一棟離れた茶室に案内されたとき、漸と落着場所に有りついたやうな安易を感じた。その離房は、簡素な茶室と、それにつゞいた薄暗い六畳の二室から成立つてゐた。氷川は勿論お茶人でも風流人でもなかつたけれど、旅でさう云ふ部屋に寝起きすることが、暫らくでもちよつとさう云ふ佗しい気分にならせるのであつた。 それがちやうど電燈のつく時分であつた。氷川は、これも飛石を渡つて行くやうにできてゐる風呂へ入つてから、その人達と外へ飯を食べに行つて、帰つて来たのはもう九時頃であつた。氷川は飯を食べたその家にも、何となし産れ故郷を訪れたやうな懐かしみを感じたのであつたが、それも燻しのかゝつた上方風の静かな家であつた。瀟洒な庭の木石のあひだに、幾つかの部屋が、飛び/\に置かれてあつた。 その晩氷川は茶室つゞき
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