野村胡堂
野村胡堂 · Jepang
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野村胡堂 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
「親分。お早うございます」 「火事場の帰りかえ。八」 「ヘエ――」 「竈の中から飛出したようだせ」 銭形平次――江戸開府以来と言われた捕物の名人――と、子分の逸足、ガラッ八で通る八五郎が、鎌倉河岸でハタと顔を合せました。まだ卯刻半(七時)過ぎ、火事場帰りの人足が漸く疎らになって、石垣の上は、白々と朝霜が残っている頃です。 「ところでどこへ行きなさるんで? 親分」 「三村屋も放火だってえじゃないか」 「ヘエ。それで実は、親分をお迎えに行くところでしたよ」 「酒屋ばかり選って、立て続けに三軒も焼くのは穏やかじゃないネ」 「どこの餡コロ餅屋だか知らないが、野暮な火悪戯をしたもので――」 「馬鹿だな。そんな事を言うと、餅屋に殴られるぜ」 「ヘエ――」 ガラッ八は埃と煙で汚れた、長い顎をしゃくって見せました。 今年になってから、ほんの半月ばかりの間に、神田中だけでも三ヶ所の放火があった――最初の一つは、正月八日の夜半過ぎ、浜町の大黒屋で、これは夜廻りが見つけてボヤですましたが、二度目のは、中四日おいて正月の十三日、外神田松永町の小熊屋で、これは、着のみ着のままで飛出したほどの丸焼け、三度目は正月
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