野村胡堂
野村胡堂 · Jepang
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野村胡堂 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
「八、居るか」 向柳原の伯母さんの二階に、獨り者の氣樂な朝寢をしてゐる八五郎は、往來から聲を掛けられて、ガバと飛起きました。 障子を細目に開けて見ると、江戸中の櫻の蕾が一夜の中に膨らんで、甍の波の上に黄金色の陽炎が立ち舞ふやうな美しい朝でした。 「あ、親分。お早う」 聲を掛けたのは、まさに親分の錢形平次、寢亂れた八五郎の姿を見上げて、面白さうに、ニヤリニヤリと笑つて居ります。 「お早うぢやないぜ、八。もう、何刻だと思ふ」 「そのせりふは伯母さんから聞き馴れてゐますよ。――何んか御用で? 親分」 八五郎はあわてて平常着を引つ掛けながら、それでも減らず口を叩いてゐるのでした。 「大變だぜ、八五郎親分。こいつは出來合ひの大變と大變が違ふよ。溝板をハネ返して、野良犬を蹴飛ばして、格子を二枚モロに外すほどの大變さ」 平次はさういひ乍ら、一向大變らしい樣子もなく、店先へ顏を出した八五郎の伯母と、長閑なあいさつを交してゐるのでした。 「あつしのお株を取つちやいけません。――どうしたんです、親分」 八五郎は帶を結びながら、お勝手へ飛んで行つて、チヨイチヨイと顏を濡らすと、もう店先へまぶし相な顏を出しま
野村胡堂
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