野村胡堂
野村胡堂 · Jepang
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野村胡堂 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
「親分」 ガラツ八の八五郎が、泳ぐやうに飛込んで來たのは、江戸中の櫻が一ぺんに咲き揃つたやうな、生暖かくも麗らかな或日の朝のことでした。 「なんだ八、大層あわててゐるぢやないか」 錢形平次は朝飯の箸を置くと、大して驚く樣子もなく、煙管を取上げて、粉煙草をせゝります。 「落ついて居ちやいけませんよ。釜屋で又殺しがあつたんで」 「釜屋?」 「北新堀の釜屋、――ツイ十日ばかり前に主人の半兵衞が鐵砲で撃たれて死んだ――」 「誰が殺されたんだ」 平次もさすがに愕然としました。拔荷の鐵砲を百梃、三千兩でさる大名に賣り込まうとした釜屋半兵衞が、怨のある女中に殺され、鐵砲百梃は平次の働きで公儀に沒收されたのは、ツイ此間のことです。 「番頭の伊八が、離屋で金の番をしてゐてやられたんで、奪られた金はざつと八千兩」 「釜屋は闕所になる筈ぢやなかつたのか」 「それが、明日役人に引渡すといふ前の晩だ。際どいことをするぢやありませんか」 ガラツ八が舌を卷くのも無理のないことでした。拔け荷(密輸入)を扱つた釜屋は、主人の葬ひが濟む間もなく、跡取の初太郎は番頭伊八と共にお奉行所に呼び出され、通三丁目の店と北新堀の住家
野村胡堂
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