野村胡堂
野村胡堂 · Jepang
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野村胡堂 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
「親分、長い間お世話になりましたが――」 八五郎はいきなり妙なことを言ひ出すのです。まだ火の入らない長火鉢の前、お茶をのんで煙草をふかして、煙草を呑んでお茶を啜つて、五尺八寸の身體が、ニコチンとカフエーンで一杯になつた頃、何やら繼穗のない話を思ひ出したのでせう。 「大層改まるぢやないか、――まさか長い草鞋を履くについての挨拶ぢやあるめえな」 平次は大きく欠伸を一つ、節をつけて、さて――と言つた顏になります。 「そんなしめつぽい話ぢやありませんよ。例へば、煙草がなくなるとツイ、向柳原から此處まで飛んで來て、尻から煙の出るほど吸ふといつたあつしでせう」 「どうもさうらしいな。飯の食ひ溜めといふことは聽いたが、煙草の呑み溜めは、八五郎一人に備はる藝當だよ」 「そこでね、親分。それもこれも不斷小遣ひのないせゐでせう」 「恐ろしく悟りやがつたな」 「金儲けなんて藝當はあつしの柄ぢやなし、こいつは一番心を入れ換へて、溜めるに越したことはないと覺悟をきめましたよ。道話の先生もさう言つたでせう――儲けるより溜める方が早い――と」 「大層なことになるものだな。氣は確かか、八」 「へツ、ずんと正氣で、この
野村胡堂
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