牧野信一
牧野信一 · Jepang
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牧野信一 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
僕(理科大学生)は、さつき玄関でチラリと娘の姿を見たばかりで一途にカーツと全身の血潮が逆上してしまつて(註、ガール・シヤイを翻訳すれば、美しい女を見ると無性に気恥かしくなつて口が聞けなくなる病――とでも云ふべきであらう。)慌てゝ自分の部屋へ逃げ込んでしまつた。 「おーい、二郎、来ないか?」 兄貴が呼んだ。僕はゾーツとした。――斯う逆上すると、それが何んな原因に依る感情であるか(有頂天の法悦にひたり酔つてゐた筈だツたが)――などといふことは反つて忘れてしまつて、厭世観に誘はれて来る。 僕は堅くなつて兄貴の部屋に入つて行つた。わざと何気ない素振りを装はうとする努力が、却つて僕の態度を堅くしてしまふのだ。 兄貴は僕の顔を見るがいなや、変に快活気な調子で、 「フロラさんだよ。」 と、僕も噂にだけは聞いてゐたアメリカ娘を紹介した。噂に聞いてゐた時よりも、ずつと美しいので僕は内心酷く驚いてゐた。 「おゝ、ジロウ――お前のことは予々お前の兄から……」 フロラは流暢な自国の言葉で、洗練された愛嬌を振りまきながら腕を差し出した。それだけ解つたゞけで、何んな言葉を云つてゐるのか僕にはさつぱり解らなくなつて
牧野信一
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