牧野信一
牧野信一 · Jepang
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牧野信一 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
わたしは昨今横須賀に住んでゐるので、映画などを見たいときは湘南電車で、横浜へ出かけるのであつた。ながい間の酒の習慣を、止むなく禁じなければならない健康状態から、恰度この一年ばかりの間、あちこちの田舎に移り住んで、夕暮時のてれ臭さとたゝかひつゞけてゐたわけだつたが、さう軍艦や飛行機ばかりにうつゝを抜かしても居られず、そんな健康的な軍港に移つても、灯のつく時刻になると、手もなく身柄を持ちあつかつた。こんな心持は馬鹿々々しいと申せば、それぎりだが、ある種の飲酒常習者には容易く心底から同感出来るであらう――この歎きこそ、正しく知る人ぞ知るに相違ない。 その日は、朝からうらうらとした長閑な日和で――さうさう、わたしの田舎の遊んでばかり居るある友達で、ひとの顔さへ見れば、何かしら理由をつけて、例へば、つまり、女房が癪にさはつたから――とか、友達にだまされて口惜しいから――とか、あまり金がなくつてムシヤクシヤしてしまつたから――とかと、少々落語の主人公泌みるはなしであるが、ほんたうにそんな風に、何かしら理窟をつけて飲まずには居ない男だつた。ところが或る日、わたしと出遇ふと、何う彼があたまをひねつても
牧野信一
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