牧野信一
牧野信一 · Jepang
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牧野信一 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
ある土曜日の放課後、清一はカバンを確かりとおさへて、家ンなかへ慌しく駆け込むやいなや、其の儘帽子も脱がず、 「お母さん!」と叫んだ。 「何だね、騒々しいぢやないか。お前またお友達と喧嘩でもしたんぢやないの?」と、縫物をしてゐた彼の母は、驚いたやうに軽く眼を挙げて彼を睨んだ。 学校から家までかなりの道程を、夢中になつて駆けて来た清一は、息が切れて、おまけに少し慌てると、吃る癖のある彼は、容易に言葉が続けられなかつた。 「どうしたんだね、清一!」 母は清一が眼を白黒させてゐる様子を見ると、思はずプツと笑ひ出した。 「あの……ね、お母さん……ぼゝゝゝ僕ツ……!」 「慌てることはないよ。御用があるんならゆつくりお云ひよ。落着いて……」 此の一言に力を得て、清一は漸くの事で、之から直ぐに鎌倉の叔父さんのところへ行きたいといふ意味を母に伝へる事が出来た。といふ訳は、清一の学校では今度展覧会が開かれることになつたので、 「今度の展覧会は、諸君も承知の通り一年に一回しか催されない、云はゞ諸君の晴れの舞台なのだから、そのつもりで大いに腕を奮つて下さい。」と、一同を激励したあとで、先生は、期日も迫つて来た
牧野信一
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