牧野信一
牧野信一 · Jepang
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牧野信一 · Jepang
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Teks asli (Jepang)
酒が宴の途中で切れると、登山嚢を背にして、馬を借りだし、峠を越えて村の宿場まで赴かなければならない。――私達はついこの間うちまで、そんな山中の森かげでたくましい原始生活を営んでゐた。冬のはじめから春にかけての一冬であつた。 今、私は都の中央公園の程ちかくにあるアパートの六階の一室で、窓から満月を眺めながら四五人の友達と雑談に耽つてゐる。 「が、何時も僕は運が好くて、その使ひ番が当つたのは、たつた一度しかなかつたよ、その一冬の間で――」 などと私は語つた。カードをまき、スペキユレイシヨンをとつた者が使ひに行くことにきまつてゐる。 その、たつた一度私がスペキユレイシヨンを引いてしまつた晩の話――。 臆病な私は脚のすくむ思ひがし、胸の鼓動があたかもそれまで休止してゐた時計が急に活動をはじめたかのやうに鳴りだし、酔ひは頭の一隅に固くたゝずんでしまつた。私は次の間に行つて支度をし終はると、卓子の抽出から怖ろしく古風な大型のピストルをとりだして秘かに腰にはさんだ。――このピストルは、こんな愚かな経歴を持つてゐる。私達がこの生活を始める時に、起床の合図、飯の合図などのためにこれで空砲を放つことにしよ
牧野信一
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