一れつ
新美南吉
一れつ一れつならんでる、 土人が浜べにならんでる。 一れつ一れつならんでる、 カヌーがなぎさにならんでる。 一れつ一れつならんでる、 わにの卵がならんでる。 一れつ一れつならんでる、 しげつたやしがならんでる。 一れつ一れつならんでる、 ひでりの雲がならんでる。 一れつ一れつあゝみんな、 水にうつつてならんでる。 ●図書カード
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新美南吉
一れつ一れつならんでる、 土人が浜べにならんでる。 一れつ一れつならんでる、 カヌーがなぎさにならんでる。 一れつ一れつならんでる、 わにの卵がならんでる。 一れつ一れつならんでる、 しげつたやしがならんでる。 一れつ一れつならんでる、 ひでりの雲がならんでる。 一れつ一れつあゝみんな、 水にうつつてならんでる。 ●図書カード
松濤明
七月、谷川に行った帰りだった。ちょうど集会の夜だったので、私は例のようにもう、とぐろを巻いて怪弁を振るっているであろう仲間たちの顔を思いうかべながら、地下鉄にゆられていた――とつぜん、背後から声をかけられた私は振り返った。そこに立っていたのは一人の青年だった。がっちりと、背の高い、面もなかなかの男振りで、軽い着流し姿は涼みがてらに夜店を冷やかしての帰りであろ
長谷川時雨
一世お鯉 長谷川時雨 一 「そりゃお妾のすることじゃないや、みんな本妻のすることだ。姉さんのしたことは本妻のすることなのだ」 六代目菊五郎のその銹た声が室の外まで聞える。 真夏の夕暮、室々のへだての襖は取りはらわれて、それぞれのところに御簾や几帳めいた軽羅が垂らしてあるばかりで、日常の居間まで、広々と押開かれてあった。 打水をした庭の縁を二人三人の足音がして
宮沢賢治
去る九月四日、花巻温泉で第十七回極東ビジテリアン大会が行はれた。これは世界の食糧問題に対する相当の陰謀をも含むもので昔は極めて秘密に開催されたものであるさうであるが今年は公開こそはしなかったが別にかくしもしなかったやうだ。 たぶんそれは世界革命の陰謀などにくらべると余りこどもじみたものなので誰もびっくりしないためであったらうと思はれる。 その代りその会合たる
宮本百合子
一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果 宮本百合子 一九三七年十二月二十七日、警保局図書課が、ジャーナリストをあつめて懇談会を開く。その席上、ジャーナリストが自発的に執筆させないようにという形で、執筆禁止をした者、作家では中野重治、宮本百合子、評論家では岡邦雄、戸坂潤、鈴木安蔵、堀真琴、林要の七名があった。 益々その範囲を拡大
戸坂潤
個人に公的生活と私生活とがあるように、社会全体にも云わば公的生活と私的生活との区別がある。別に社会の裏面があるということではない、社会の内心の生活があるという意味だ。どっちの生活も現実の生活であって、どっちだけを採りどっちを捨てるというわけには行かない。社会の公私生活がお互いに割合背反していない場合には、一方を以て他方を代表させることが出来る。即ち公的生活を
槙村浩
営舎の高窓ががた/\と揺れる ばったのやうに塀の下にくつゝいてゐる俺達の上を 風は横なぐりに吹き 芝草は頬を、背筋を、針のやうに刺す 兵営の窓に往き来する黒い影と 時どき営庭の燈に反射する銃剣を見詰めながら おれは思ふ、斃されたふたりの同志を 同志よ おれは君を知らない 君の経歴も、兵営へもぐり込んで君が何をしたかも 兵営の高塀と歩哨の銃剣とはお互の連絡を断
宮本百合子
一九三二年の春 宮本百合子 一 三月二十九日の朝、私は塩尻駅前の古風な宿屋で目をさました。雪が降っていた。この辺では、宿屋などは夜じゅう雨戸をしめず、炬燵のある部屋の障子をあけると、もういきなり雪がさかんに降っている内庭が眺められる。松の枝につもる雪を見ながら朝飯をしまって、わたしはたった一つの荷物の小カバンを片手に下げ、外套の襟を高くたてて雪の中を駆けてス
北条民雄
ここ十日ばかりといふもの、何もせずにぼんやりと机の前に坐つて暮してゐる。一年の疲れが出て来たのかといふと、さうでもなく、ただなんとなくぼんやりしてゐる次第なのだ。今年の仕事がどうにか終つたのでほつとしてゐるせゐもあるが、まあとにかくここまでやつて来たと今年一ぱいを振りかへつて見る気持なのだ。何にしても死なないで生きてゐたといふことはめでたいことではないか。一
宮本百合子
一九三四年度におけるブルジョア文学の動向 宮本百合子 一九三四年のブルジョア文学の上に現れたさまざまの意味ふかい動揺、不安定な模索およびある推量について理解するために、私たちはまず、去年の終りからひきつづいてその背景となったいわゆる文芸復興の翹望に目を向けなければなるまいと思う。 知られているとおり、この文芸復興という声は、最初、林房雄などを中心として広い意
牧野信一
いつもカキ色のシヤツを着て牧場から町へ、フオード自動車を操って乳を運んでゐる村の牛乳屋の娘を僕は知つてゐる。天気の好い休日には娘の操る車に、村のあらゆる階級の若者、主に娘達が乗り込んで、屹度何処かへ遊びに行く。健康と明快と原始性と――娘の車の中を観察したら微笑むべき一九三〇年型を見出すだらうと思ふが。 ●図書カード
宮本百合子
一九二七年八月より 宮本百合子 一九二七年三月 下旬の或日。春の始めの憂鬱な日がつづいた。 A、四十五六。 独身、一 Y、三十二歳 ※ 二十九歳 或夜 A来る。十二月から一人で農園をして居た その朝 「友情うすき友達たちよ」 云々 「女性の声がききたくなった」 云々 手紙が来た。その夜来る。三人ともナーァス 春の潮が神経をかき乱して居るため。 何かの話から
宮本百合子
一九二七年春より 宮本百合子 ○雲に映るかげ ○茅野の正月 ○ゴーゴリ的会の内面 ○アルマ ○花にむせぶ(Okarakyo の夫婦、犬、息子(肺病)) ○となり座敷(下スワの男、芸者二人。自分、Y、温泉) ○夢、 雲に映る顔 ○夕やけの空を見て居る。 ○家に居なくなった母 ○雲が母の顔に見える ○子供山の向うに行ってしまう ○茅野 ○かんてんをつくる木のわく
宮本百合子
一九二三年冬 宮本百合子 ○Aの教えかた(家庭のことで) ○夫妻の品行ということ、 ○自分の子についての心持 ○母のない子、母というものの大切さ。 ○頼られるという人のたち、 ○自分のうそ。それにつれて考えた ○人格の真の力の養い、 ○西川文子氏の話 ○伊藤朝子氏 ○Aの「かまわない」 ○自分とT先生との心持 ◎敏感すぎる夫と妻 ◎まつのケット ◎本野子爵夫
宮本百合子
一九二三年夏 宮本百合子 標準時計 福井 地震と継母 Oのこと mammy のこと aと自分 ○祖父母、母、――自分で三つの時代の女性の生活気分と時代(明治初年、明治三十七八年――現今)に至るを、現したい。 ――○―― 国男、山田さん位の青年の恋に対する心持、恋のしかた、と、娘のそれとの組み合わせ。 ――○―― 放火犯の心持、 寥しさに火をいじることから始り
宮本百合子
一九二九年一月――二月 宮本百合子 二月 日曜、二十日 朝のうち、婦人公論新年号、新聞の切りぬきなどをよんだ。東京に於る、始めての陪審裁判の記事非常に興味あり。同時に陪審員裁判長の応答、その他一種の好意を感じた。紋付に赤靴ばきの陪審員の正直な熱心さが感じられる 例えばこんな質問のうちに。 マッチから指紋をとろうとしなかったか 指紋をとることを思いつかなかった
宮本百合子
一九二五年より一九二七年一月まで 宮本百合子 ○パオリのこと ○父と娘との散策 ○武藤のこと ○貴婦人御あいての若い女 ○夢(二) ○隣の職工の会話 ○夜の大雨の心持。 ○小野、山岡、島野、(態度 言葉 顔) ○十月一日(十四夜月) ○日々草(十月) ×柳やの女中のこと。巡査、おかみ、円覚寺の寺男。 ○肝癪のいろいろ 十月の百花園 ○部屋をかりに行った中野近
小林多喜二
お惠には、それはさう仲々慣れきることの出來ない事だつた。何度も――何度やつてきても、お惠は初めてのやうに驚かされたし、ビク/\したし、周章てた。そして、又その度に夫の龍吉に云はれもした。然し女には、それはどうしても強過ぎる打撃だつた。 ――組合の人達が集つて、議題を論議し合つてゐるとき、お惠がお茶を持つて階段を上つて行くと、夫の聲で、 「嬶の意識の訓練となる
海野十三
一九五〇年の殺人 海野十三 「旦那人殺しでがすよ」 「ナニ人殺しだって? 何処だッ、誰が殺されたのだッ、原稿の頁が無いのだ、早く云え」 「そッそんなに急いでも駄目です。場所は向うの橋の下ですよ。手足がバラバラになっていまさあ、いわゆるバラバラ事件というやつでナ」 「被害者の人相に見覚えは無いかネ」 「ああバラバラじゃ、人相は判りっこなしでさあ」 「じゃ直ぐに
宮本百合子
一九四七年の文学の動向として大へん目立つことは大体三つあると思います。 その一つは、一九四六年中は戦争に対する協力者としての活動の経験から執筆をひかえていたどっさりの作家が、公然と活動をはじめたことです。これは日本の政府が自分自身の組織の中に、あいまいな条件におかれている多くの政治家をもっているために、戦争の責任者の究明をごく申訳け的に行っている事情に呼応す
宮本百合子
序 昨年十月から今年の十月まで一年が経ちました。その間にはずいぶんいろいろのことがございました。昨年の八月以後、私どもが新しい人間性の確立と民主的な社会生活の確立、それに応じた文学の方向の確立とを求めて動きだした当時から今日までの経過の中には、はじめのころ私どもの、単純かもしれなかったけれども初々しい希望に満ちた心持が、さまざまの関係のうちに変化をうけてきて
宮本百合子
「あたりまえ」の一人の主婦 宮本百合子 櫛田フキさんの特徴は、フキさんが「あたりまえ」の一人の主婦、母、おばあちゃんであり、同時に活溌に婦人民主クラブの公共的な活動をしているという点です。彼女は重荷の全部を知っています。女が幸福になるために何をどうしなければならないかを、知っている人です。 〔一九五〇年五月〕
中谷宇吉郎
昭和十年発行の岩波版『芥川竜之介全集』第八巻に「一人の無名作家」という短文がある。 七、八年前、北国の方の同人雑誌を送って来たことがあるが、その中の『平家物語』に主題をとった小説が、印象に残っている。「今はその青年の名も覚えておりませんが、その作品が非常によかったので、今でもそのテエマは覚えているのですが、その青年の事は、折々今でも思い出します。才を抱いて、
ストリンドベリアウグスト
人物 甲、夫ある女優。 乙、夫なき女優。 婦人珈琲店の一隅。小さき鉄の卓二つ。緋天鵞絨張の長椅子一つ。椅子数箇。○甲、帽子外套の冬支度にて、手に上等の日本製の提籠を持ち入り来る。乙、半ば飲みさしたる麦酒の小瓶を前に置き、絵入雑誌を読みいる。後対話の間に、他の雑誌と取り替うることあり。 甲。アメリイさん。今晩は。クリスマスの晩だのに、そんな風に一人で坐っている