Vol. 2May 2026

图书

公共领域世界知识图书馆

共 14,981 本中显示 8,952 本

春六題

寺田寅彦

春六題 寺田寅彦 一 暦の上の季節はいつでも天文学者の計画したとおりに進行して行く。これは地球から見た時に太陽が天球のどこに来ているかという事を意味するだけの事であるから、太陽系に何か大きな質量の変化が起こるか、重力の方則が変わらない限り、予定のとおり進行してゆくはずである。 近ごろ、アインシュタインの研究によってニュートンの力学が根底から打ちこわされた、と

JA
仅原文

春がくる前

小川未明

さびしい野原の中に一本の木立がありました。見渡すかぎり、あたりは、まだ一面に真っ白に雪が積もっていました。そして、寒い風が、葉の落ちつくしてしまった枝を吹くのよりほかに、聞こえるものもなかったのです。 木は、こうして毎日、長い寒い冬の間、さびしいのを我慢していました。それにつけても、過ぎ去った春、夏、秋の間のいろいろ楽しかったこと、おもしろかったことを思い出

JA
仅原文

春になる前夜

小川未明

すずめは、もう長い間、この花の国にすんでいましたけれど、かつて、こんなに寒い冬の晩に出あったことがありませんでした。 日が西に沈む時分は、赤く空が燃えるようにみえましたが、日がまったく暮れてしまうと、空の色は、青黒くさえて、寒さで音をたてて凍て破れるかと思われるほどでありました。どの木のこずえも白く霜で光っています。ものすごい月の光が一面に、黙った、広い野原

JA
仅原文

春さきの古物店

小川未明

広やかな通りには、日の光が暖かそうにあたっていました。この道に面して、両側には、いろいろの店が並んでいました。ちょうどその四つ辻のところに、一軒の古道具をあきなっている店がありました。そこに、各種の道具類が置かれてある有り様は、さながら、みんなは、いままで働いていたけれど、不用になったので、しばらく骨休みをしているというようなようすでありました。 どんなもの

JA
仅原文

春の土へ

今野大力

早く春になったら、どんなに楽しい事だろう、日向の小高い丘に軟く暖く香高い土があらわれて、蕗の薹が上衣を脱ぎ、水晶の様に澄んだ水が、小川を流れ、小魚がピチピチ泳いでいる。そして先ず一番に「春である」事を思わせる。一日一日暖くぽかぽかとほてって来る陽を背に受けて、私は蘇る様な歓喜に酔う。からだに満ちて来る力が力の精がどこから来て宿るのであるかああそれはあの黒土の

JA
仅原文

「春夏秋冬 料理王国」序にかえて

北大路魯山人

簡単に言って、料理とは単に舌先だけで味わうものではなく、また弄ぶものでもない。 耳から、目から、鼻からと、様々な感覚を動員して、「美」と「味」の調和を楽しむものだと思う。 色どり、盛り方、取り合せ、材料の良否と、みな「美」と深い関連性をもって考慮されています。 栄養の効果という点からも「美」は見逃がせない役割を担っています。 「味」のことばかりを言って、その

JA
仅原文

春の夕暮

中原中也

塗板がセンベイ食べて 春の日の夕暮は静かです アンダースロウされた灰が蒼ざめて 春の日の夕暮は穏かです あゝ、案山子はなきか――あるまい 馬嘶くか――嘶きもしまい たゞたゞ青色の月の光のノメランとするまゝに 従順なのは春の日の夕暮か ポトホトと臘涙に野の中の伽藍は赤く 荷馬車の車、油を失ひ 私が歴史的現在に物を言へば 嘲る嘲る空と山とが 瓦が一枚はぐれました

JA
仅原文

春の大方山

木暮理太郎

南アルプスの二、三の山が東京から望まれることが確実となったので、外にも尚お、遠い大井川奥の空から煤煙の都東京をこっそり覗いている山が或は有るかも知れない。夫を探し出すには東から眺めた山々の姿を眤と瞳の底に烙き付けて置く必要がある。この見地から農商務省出版の甲府図幅を拡げ、展望台として恰好と思われる山を物色して二つを選み出した、一は河口湖の東北に在る毛無山で、

JA
仅原文

春夫偏見

直木三十五

◇少し何うも「文藝家の生活を論ず」は、得意のもので無さすぎる。餘り無さすぎて、私はそれを正すのに大して興味をもたないが、彼の名を信じて、このまゝこれを正義とする人があつたなら、その人は不幸であると思ふから、いかに支離滅裂であるかといふ事だけを手短かに書いてをく。それは救はれそうにもない春夫氏にでは無く――小部分でもあの論に賛成した人に對してゞある。 ◇一は四

JA
仅原文

春夫と旅行できなかつた話

太宰治

一社會人として、こゝに一文を草しなければかなはぬ義務を感じてゐる。 佐藤春夫氏と共に晩秋、秋のふるさとを訪づれる約束は、眞實である。實現できず、嘘になつて、ふるさとの一、二の人士の嘲笑の的にされた樣子である。 嘘も、誠も、この世に於ては、力量の問題で、あつさり判決されるものゝ樣である。ばか、と言はれて、その二倍三倍の大聲發して、ばか、と叫び返せば、その大聲の

JA
仅原文

春宵因縁談

佐藤垢石

春宵因縁談 佐藤垢石 はなしのはじめは三木武吉と頼母木桂吉の心臓の出来あんばいから語りだすことにしよう。 このほど、頼母木東京市長が急逝した。私としては、この人の死をきいて別段深く感慨にうたれたというわけではないが、ただ頼母木が持っていた心臓の強弱については、二、三の思い出があるのである。頼母木の心臓は、強いて形容するよりも、しぶとい心臓と言った方が当たって

JA
仅原文

春宵戯語

長谷川時雨

春宵戲語 長谷川時雨 ふと、ある日、菜の花のお漬けものがございますかとAさんにお目にかかつたとき、關西の郊外の話から、お訊ねしたことがあつた。それは、ずつと前に、たしかに菜の花であらうと思ふのを食べた、その風味を忘れないでゐたからだつた。 ありますとも、しかし、あれは、はじめに出たしんを止めて、二度目に一本出た花の、頭のさきを、ちよぼつと摘んだのがよろしいと

JA
仅原文

春宵綺談

佐藤春夫

或る晩、私は倶楽部でたったひとりテーブルに肘を突いたままひどくふさぎ込んでいる佐藤春夫の横顔を見た。そこで私は彼に近づいて、晩春のこんな美しい夜をどうしてそんな顔つきをしているんだと尋ねた時に、彼は少しばかり風変りな話を私に聞かせた―― ……その停留場に私は立っていた。つい一週間ほど前のある夕方のことなのだが。 と見ると、私の二間ほどさきのところに年のころ二

JA
仅原文

春寒

寺田寅彦

春寒 寺田寅彦 スカンジナヴィアの遠い昔の物語が、アイスランド人の口碑に残って伝えられたのを、十二世紀の終わりにスノルレ・スツール・ラソンという人が書きつづった記録が Heimskringla という書物になって現代に伝えられている。その一部が英訳されているのをおもしろそうだと思って買って来たまま、しばらく手を触れないで打っちゃっておいた。 ことしの春のまだ

JA
仅原文

春屋の書について

北大路魯山人

春屋は大徳寺の名僧で、慶長十六年示寂している。 高僧の墨蹟には能書が多い。儒者の書には存外能書がない。これは仏教と儒教の影響する現象である。同じ高僧でも鎌倉以上に溯っては、いよいよ能書が多い。宗園春屋は慶長であるから、ぼつぼつ高僧の影を没する時期だ。春屋のような天真爛漫な、しかも見識のある書を書くものは、それ以後江月欠伸子、深草の元政、ずっとおくれて良寛があ

JA
仅原文

春の山

久生十蘭

蘆田周平はサンルームのつづきの日向くさい絨氈の上に寝ころがり、去年の冬から床のうえに放りだしてあった絵葉書を拾いあげた。パリのあやかしに憑かれ、ひとりで気負ったようになっている仲間がよこした自作の絵葉書である。 八月にレジェが死んだと思ったら、この月の六日にユトリロが死んだ。パリでは毎日のように人生の一大事に逢着している。そちらはどうだ。古沼の淀みのなかで、

JA
仅原文

春山秋山

楠山正雄

春山秋山 楠山正雄 一 むかし、但馬国におまつられになっている出石の大神のお女に、出石少女という大そう美しい女神がお生まれになりました。この少女をいろいろな神様がお嫁にもらおうと思って争いました。けれども少女はお嫁に行くことをいやがって、だれのいうことも聴こうとはなさいませんでした。 この神さまたちの中に、秋山の下氷男と春山の霞男という兄弟の神さまがありまし

JA
仅原文

春の幻

豊島与志雄

春の幻 豊島与志雄 春を想うと、ただもやもやっとした世界の幻が浮んでくる。それは日向に蹲ってる猫で象徴される。日向の猫の眼が、細い瞳をぼんやり開きかけては、またうっとりと閉じていくように、春の息吹きは、あらゆるものの眼を閉じさせる。冷い空気と暖い空気とがもつれ合って、なま温い靄を蒸発させ、光と影とが入乱れて、茫とした反映のうちに融け込み、物の輪郭がくずれて、

JA
仅原文

春心

田中貢太郎

広巳は品川の方からふらふらと歩いて来た。東海道になったその街には晩春の微陽が射していた。それは午近い比であった。右側の民家の背景になった丘の上から、左側の品川の海へかけて煙のような靄が和んでいて、生暖かな物悩ましい日であった。左側の川崎屋の入口には、厨夫らしい壮い男と酌婦らしい島田の女が立って笑いあっていたが、厨夫らしい壮い男はその時広巳の姿を見つけた。二十

JA
仅原文

春の手紙

牧野信一

冬の朝の日差しが深々とした縁先で、去年のノートを拡げてゐると、不図、書きかけの手紙の一片が滾れ落ちた。……一体これは誰に書いた手紙だつたか知ら? 「……朝夕の沼の霧は見るも鮮やかに紫を含んでゐる。鶯は稀だが俺達のあしおとを聞いて、茱萸や連翹の木蔭から雉子や山鳥やかけすの類が頓狂な声を立てゝ飛び立つたり、間もなく蕨の芽が萌えようとしてゐる夢のやうに伸び渡つた草

JA
仅原文

春の日

小川未明

もう、春です。仲のいい三人は、いっしょに遊んでいました。 徳ちゃんは、なかなかのひょうきんもので、両方の親指を口の中に入れ、二本のくすり指で、あかんべいをして、ひょっとこの面をしたり、はんにゃの似顔をして見せて、よく人を笑わせました。とし子さんは、おこりんぼでちょっとしたことでも、すぐにいぼをつってしまいます。そうすると武ちゃんと、徳ちゃんは、つまらなくなり

JA
仅原文

春日若宮御祭の研究

折口信夫

春日のおん祭りに関しては、一番参考になるのは「嘉慶元年春日臨時祭記」のやうです。この本は南北合一の頃の記録であるが、元々若宮祭りの記事ではありません。所が、これが臨時祭りの記録であつたのかといぶかるほど、只今の若宮祭りの行事と、ある点までぴつたりと合つてゐる。役々の名前なども大方合つてゐる。其より昔の臨時祭りは、ずつと古い記録で見て、嘉慶記の様な風のものでは

JA
仅原文