Vol. 2May 2026

图书

公共领域世界知识图书馆

14,981종 중 11,448종 표시

秋日行語 〔菊もうららに〕

萩原朔太郎

菊もうららに咲きいでたれど 我身は砂丘に寄りて悲しめり さびしや海邊のおくつきに 路傍の草を手向くること このわびしきたはむれに ひとり樹木にすがりつき たましひも消えよとむせびなく。 ああふるさとの永日に 少女子どものなつかしさ たとしへもなきなつかしさ やさしく指を眼にあてて ももいろの秋の夕日をすかしみる わが身の春は土にうもれて 空しく草木の根をひた

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秋日記

原民喜

秋日記 原民喜 緑色の衝立が病室の内部を塞いでいたが、入口の壁際にある手洗の鏡に映る姿で、妻はベッドに寝たまま、彼のやって来るのを知るのだった。一号室の扉のところまで来ると、奥にいる妻の気配や、そちらへ近づいて行こうとする微かに改まった気分を意識しながら、衝立をめぐって、ベッドのところへ彼がやって来ると、妻はいたずらっぽい微笑で彼を迎える。すると彼には一昨日

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秋旻

原民喜

一人の少年は硫酸を飲んで、袴を穿いて山に行き松に縊ったが、人に発見されて、病院で悶死した。一人の少年は友達と夜行列車に乗ってゐて、「この辺は単線か、複線か。」と尋ねてゐたが、一寸の隙にブリッヂから飛込んで昏倒し、その上を別の列車が轢いて行った。もう一人の少年は、「今夜は見ものだよ。」と謎のやうなことを云ってゐたが、その夜彼の部屋の窓には何時までも煌々と燈が点

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秋晴れの日

牧野信一

彼は、飲酒があまり体質に適してゐないためか、毎朝うがひをする時に、腹の中から多量の酒臭い不快な水を吐き出した。前には、それは時々のことだつたがこの頃では、これが定めとなつてしまつた。そして、これも前には稀であつたが、この吐く水がなくなると、一層激しく、胸や腹が、空々しく、苦しく、ゲクゲクと鳴つて、それから苦く黄色い胃液を吐き出した。 大体彼は、生来健康な質だ

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秋の暈

織田作之助

秋という字の下に心をつけて、愁と読ませるのは、誰がそうしたのか、いみじくも考えたと思う。まことにもの想う人は、季節の移りかわりを敏感に感ずるなかにも、わけていわゆる秋のけはいの立ちそめるのを、ひと一倍しみじみと感ずることであろう。私もまた秋のけはいをひとより早く感ずる方である。といって、もの想う故にではない。じつは毎夜徹夜しているからである。 私の徹夜癖は十

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秋の暮

西東三鬼

私は今日、町はづれのお不動様の近くに、用事があつて出掛けたが、用事の済んだのは夕暮れで、道傍の草むらには、秋も終りに近い虫の声が散らばつていた。そんな時間にも、まだお不動様へお詣りの群が切れ/″\につゞいて来るのであつた。 四、五十歳位の女の人が多く、皆、肩から斜に白い襷を掛け、それには津山不動講と書いてあつた。 そして私も岡山県津山市で生れたのだ。 私もこ

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秋月先生の古稀を祝して

小泉八雲

秋月老先生、―― 『世界に於ける最も丁寧なる人々』の禮儀を知らない私、それから上品にして美はしい種類の挨拶の言葉のあるその國語を知らない一外國人である私は、私の恭しき賀状を御送り申上げる場合に、私の云ふべき事が云へないやうに感じます。即ち日本語には、尊敬すべき年齡に相當する愛情、尊敬、及び信任を、私共の粗い西洋のどの國語に於けるよりも優美に表はす多くの美しい

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秋果

林芙美子

秋果 林芙美子 芝居が閉ねて劇場を出ると、もんは如何にも吻つとしたやうに暗い街を歩いた。おなかが空いてゐたけれど、もうこのごろは何一つこんなに遲くまで食物店をひらいてゐる店もない。芝居もどりの人達が、ぞろぞろ自分のそばを通つてゐた。新宿行の電車の通つてゐる四ツ角の安全地帶のところまで來ると、もんは誰かが自分の肩を強く押して通つたやうな氣がして、ふつと振り返つ

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秋の歌

寺田寅彦

チャイコフスキーの「秋の歌」という小曲がある。私はジンバリストの演奏したこの曲のレコードを持っている。そして、折にふれて、これを取り出して、独り静かにこの曲の呼び出す幻想の世界にわけ入る。 北欧の、果てもなき平野の奥に、白樺の森がある。歎くように垂れた木々の梢は、もう黄金色に色づいている。傾く夕日の空から、淋しい風が吹き渡ると、落葉が、美しい美しい涙のように

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秋毛

宮本百合子

秋毛 宮本百合子 病みあがりの髪は妙にねばりが強くなって、何ぞと云ってはすぐこんぐらかる。 昨日、気分が悪くてとかさなかったので今日は泣く様な思いをする。 櫛の歯が引っかかる処を少し力を入れて引くとゾロゾロゾロゾロと細い髪が抜けて来る。 三度目位までは櫛一杯に抜毛がついて来る。 袖屏風の陰で抜毛のついた櫛を握ってヨロヨロと立ちあがる抜け上った「お岩」の凄い顔

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秋は淋しい

素木しづ

秋は淋しい 素木しづ 一時心配した時子の病氣も、だん/\快い方に向って来ると、朝子は毎日ぼんやりした顔をして子供のベッドの裾の方に腰をおろしてゐた。そして時子の寝てゐる間は、白いカーテンの巻き上げてある窓の方を見てゐる。 窓からは、毎日のやうに釣台で運ばれて来る病人が見えた。病人の顔は黄色くなった木の葉のやうにみんな力ない。けれども空はいつも晴れてゐた。 窓

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秋深き

織田作之助

秋深き 織田作之助 医者に診せると、やはり肺がわるいと言った。転地した方がよかろうということだった。温泉へ行くことにした。 汽車の時間を勘ちがいしたらしく、真夜なかに着いた。駅に降り立つと、くろぐろとした山の肌が突然眼の前に迫った。夜更けの音がそのあたりにうずくまっているようだった。妙な時刻に着いたものだと、しょんぼり佇んでいると、カンテラを振りまわしながら

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秋が深い頃だ

牧野信一

酒井君! いつかは失敬! あれはタイガア・カフエだつたかしら? そしてこの前の君の手紙もああいふわけで(?)失敬したよ。 手紙ありがたう、今もとても気の利いた感想なんてあるはずはないんだけれど、君の編輯後記を見ると、原稿を送つても寄こさない奴! 何とまあいやな奴なのだらうと云ふやうな意味がかいてあつたので、(そんなことがかいてあつたのかしらん、ほんたうに!)

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秋と漫歩

萩原朔太郎

四季を通じて、私は秋という季節が一番好きである。もっともこれは、たいていの人に共通の好みであろう。元来日本という国は、気候的にあまり住みよい国ではない。夏は湿気が多く、蒸暑いことで世界無比といわれているし、春は空が低く憂鬱であり、冬は紙の家の設備に対して、寒さがすこしひどすぎる。(しかもその紙の家でなければ、夏の暑さがしのげないのだ。)日本の気候では、ただ秋

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秋田街道

宮沢賢治

秋田街道 宮沢賢治 どれもみんな肥料や薪炭をやりとりするさびしい家だ。街道のところどころにちらばって黒い小さいさびしい家だ。それももうみな戸を閉めた。 おれはかなしく来た方をふりかへる。盛岡の電燈は微かにゆらいでねむさうにならび只公園のアーク燈だけ高い処でそらぞらしい気焔の波を上げてゐる。どうせ今頃は無鉄砲な羽虫が沢山集ってぶっつかったりよろけたりしてゐるの

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秋窓雑記

北村透谷

秋窓雑記 北村透谷 第一 かなしきものは秋なれど、また心地好きものも秋なるべし。春は俗を狂せしむるに宜れど、秋の士を高うするに如かず。花の人を酔はしむると月の人を清ましむるとは、自から味を異にするものあり。喜楽の中に人間の五情を没了するは世俗の免かるゝ能はざるところながら、われは万木凋落の期に当りて、静かに物象を察するの快なるを撰ぶなり。 第二 希望は人を欺

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秋の第一日

窪田空穂

土用は過ぎたが、盛夏の力は少しも衰へずに居る。直射する日光、白くかがやく雲の峯、上から圧しるやうに迫つて来る暑気、地の上のすべての物は、反抗する力も、脱れて行く法もなく、恣に振舞ふ威力の前に、ただ頸垂れて、悸いて居るだけである。日中は軽やかに声を立てる者も無い。何所を見ても、擾乱し困憊してゐて、その中に、一脈の静寂の気も漂つて居るのが感じられる。 さういふ日

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秋のお約束

小川未明

まあちゃんが、「寒い、寒い。」といっていましたときに、お母さんは、子供たちのきものをぬいながら、 「もう、あちらのけやきの木の枝がいろづいたから、じきにあたたかくなりますよ。」と、おっしゃいました。 まあちゃんは、お母さんにつれられて幼稚園へまいります途中、ふと頭の上をあおぎ見ますと、うす緑色のやわらかなこまかな葉が、いっぱいけやきの木の枝から出て、おもしろ

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秋草の顆

佐左木俊郎

秋草の顆 佐左木俊郎 寡黙と消極的な態度とは私達一族の者の共通性格と言ってもいいのだ。私は郷家に帰省して、二三日の滞在中、殆んど父母と言葉を交わさずに帰って来ることが少なくなかった。父もまた、田舎からわざわざ私達に会いに出て来ながら、妻の問いに対してほんの二言か三言の答えをするだけで、私とは殆んど口をきかずに帰って行くことが多い。別に私達親子の間の愛情が薄い

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秋霧

宮本百合子

秋霧 宮本百合子 一面、かなり深い秋霧が降りて水を流した様なゆるい傾斜のトタン屋根に星がまたたく。 隣の家の塀内にある桜の並木が、霧と光線の工合で、花時分の通りの美くしい形に見える。 白いサヤサヤと私が通ると左右に分れる音の聞える様な霧に包まれた静かな景色は、熱い頬や頭を快くひやして行く。 霞が深く掛った姿はまだはっきり覚えて居るほど新らしい時に見た事はない

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秋風

宮本百合子

秋風 宮本百合子 秋風が冷や冷やと身にしみる。 手の先の変につめたいのを気にしながら書斎に座り込んで何にも手につかない様な、それで居て何かしなければ気のすまない様な気持で居る。 七月からこっち、体の工合が良くない続きなので、余計寒がりに、「かんしゃく持」になった。 茶っぽく青い樫の梢から見える、高あく澄んだ青空をながめると、変なほど雲がない。 夏中見あきるほ

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秋風と母

尾崎士郎

昼少し過ぎてから母の容体が急に変ってきた。妻が呼びに来たので私が慌てて下の家へおりていったときには母は敷きっぱなしになっている小さい蒲団の上に身体をえびのように曲げてしゃがみ、絶えずいきむようなうめき声を立てながら苦痛に抵抗するために下腹部を烈しくよじらせていた。何時もの発作があらわれたのだ、妻は母のうしろから軽く背中を撫でおろしながら、 「すぐ医者が来ます

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