直木三十五
直木三十五 · Japanese
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相馬の仇討 相馬の仇討 直木三十五 一 「軍右衛門、廉直にして」、「九郎右衛門後(のち)に講釈師となる」 廉直などと云う形容詞で書かれる男は大抵堅すぎて女にすかれない。武士であって後に講釈師にでも成ろうという心掛けの男、こんなのは浮気な女に時々すかれる。 そこで、軍右衛門の女房は浮気者であったらしく、別腹の弟九郎右衛門といい仲に成ってしまった。寛延二年の暮の話である。翌年の三月、とっくから人の口にはのぼって独り「廉直なる」軍右衛門のみが知らなかったものが、薄々気づき出したようだから、二人はいくらかの金をもって逃出してしまった。 どうせこういう二人が、少々位の金で暮らして行けよう訳が無い。 「どうやら兄貴め、ここに居るのに気がついたらしいぜ。中国へ出ようたって路銀は無し、どうだやっつけようか? ええ、未練があるかい」 「あの人を殺す?」 「あっちを殺さなけりゃ、こっちが殺されるさ。毒食や皿さ、それともまだ思出す時があるのかい」 「思出しやしないけど」 「じゃいいじゃ無いか」 どうせ二人ともそう気の利いた会話などしっこない。こんな事を話して機(おり)をまつ。九郎右衛門衛の腹では、うまく行っ
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