
岡本かの子 · japonés
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岡本かの子 · japonés
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Original (japonés)
月の出の間もない夜更けである。暗さが弛んで、また宵が来たやうなうら懐かしい気持ちをさせる。歳子は落付いてはゐられない愉しい不安に誘はれて内玄関から外へ出た。 「また出かけるのかね、今夜も。――もう気持をうち切つたらどうだい。」 洋館の二階の書斎でまだ勉強してゐた兄が、歳子の足音を聞きつけて、さういつた。 窓硝子に映る電気スタンドの円いシエードが少しも動揺しないところを見ると、兄は口だけでさういつて腰を上げてまで止めに出ては来ないらしい。 「ええ、もう今夜たつた一晩だけ――ですから心配しないで、兄さんもご自分の勉強をなさつて……。」 歳子は自分の好奇な行為だけを云はれるのに返事をすればたくさんなのに、兄の勉強のことにまで口走つてしまつたので、すこし云ひ過ぎたかと思つたのに、兄は「うむ、さうか」と温順しく返事をしたので、却つて気が痛みかけた。 「兄さん、棕櫚の花が咲いてますのよ。葉の下の梢に房のやうに沢山。あたし何だか、ぽち/\冷たい小粒のものが顔に当るので雨かしらと思ひましたらね、花が零れるのですわ。」 兄の気持ちを取做し気味に、歳子はあどけなくかう云つた。すると兄はすつかり気嫌よく、

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