岡本綺堂
岡本綺堂 · japonés
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Original (japonés)
四月なかばの土曜日の宵である。 「どうです。あしたのお天気は……」と、半七老人は訊いた。 「ちっと曇っているようです」と、わたしは答えた。 「花どきはどうも困ります」と、老人は眉をよせた。「それでもあなた方はお花見にお出かけでしょう」 「降りさえしなければ出かけようかと思っています」 「どちらへ……」 「小金井です」 「はあ、小金井……。汽車はずいぶん込むそうですね」 「殊にあしたは日曜ですから、思いやられます」 「それでも当節は汽車の便利があるから、楽に日帰りが出来ます。むかしは新宿から淀橋、中野、高円寺、馬橋、荻窪、遅野井、ぼくや横町、石橋、吉祥寺、関前……これが江戸から小金井へゆく近道ということになっていましたが、歩いてみるとなかなか遠い。ここで一日ゆっくりお花見をすると、どうしても一泊しなければならない。小金井橋のあたりに二、三軒の料理屋があって、それが旅籠を兼業ですから、大抵はそこに泊めてもらうことになるのですが、料理屋といっても田舎茶屋で、江戸から行った者にはずいぶん難儀でした」 「あなたもお出でになった事があるんですね」 「ありますよ」と、老人は笑った。「小金井の桜のいい
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