酒井嘉七
酒井嘉七 · japonés
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酒井嘉七 · japonés
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Original (japonés)
「あすの朝迄に一人殺して下さい。いゝですか。九時に報告に来て下さい。私は今晩ここで徹夜しますから朝までずつとゐます。報酬は先に渡しておきます。」 と、札束を机の上へ投げる音がする。午後の十時である。八階二十五号室の表に佇んで聞くともなく、かうした会話を耳にした警手の西山は、ぎよッとした。この建物に警手として雇われてから、まだ一週間にもならない彼には、この二十五号室の事務所が何を商売にするのか、それすら知らない。表の名札には、「オベリスク社」と彼には何のことか分らない片仮名の文字が記されてゐるに過ぎない。殺人を依頼された人物が出て来る気配がする。警手の西山は知らぬ顔をして、リノリュームの通路を静かに歩き初めた。部屋部屋に異常はないか、と聞き耳を立てながら、静かに歩を移して行く。二十五号室から出て来た殺人の依頼を受けた男が、コツコツと靴音をさせながら後から近ずいて来る。 「御苦労さんです。」 通り過ぎる時に、かう警手に声をかけた。 「はあ。」 西山は前をむいたまま、軽く頭を下げて、遠ざかつて行く彼の後姿を見送つた。都会とは恐ろしい処だ。自分は田舎の国民学校へ通つてゐる頃から非常に残忍な性質
酒井嘉七
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