佐藤春夫
佐藤春夫 · japonés
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Original (japonés)
今朝、室生君からの手紙を枕頭に受け取つて、まだ起きもせずに開いて見ると、忘春詩集に序を書けといふのである。読みながら第一に私が思ひ浮べたことは或る会話である。それはつい一週間も前に私を訪ねた或る人と私とが取交したものである。―― 「この間、室生氏のところへ行つて、悪い嗜みだとは思つたが直接にあの人の詩をほめたら、僕の詩をほめるのはお前の小説には感心出来ないといふことの代りぢやないかねと室生氏に言はれましたが、そんな悪い智慧をつけたのはあなたぢやありませんか。」 「いや。僕は室生君にそんなことを言つた覚えはない。――が、待ち給へ。僕は五月ごろに彼に逢つた時に『新潮』に出た彼の詩の新作を三嘆して、あれこそ本当に君のものだ。君の小説の全部を見るよりもあの詩のなかのどの一篇をでも見た方が一層親しく君に接するとさへ思ふ。――とさう言つたことは思ひ出す。僕は必らずしもその小説を貶めるつもりではなかつたのに、室生君は自分に考へて見て或はさういふ風に解したのかも知れない。」 私は本当にさうかも知れないと思つて、それにしても室生君が私のごとき者の一語をもそれほど気にとめて居てくれることを有難く思つた。
佐藤春夫
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