薄田泣菫
薄田泣菫 · japonés
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薄田泣菫 · japonés
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Original (japonés)
喜光寺 薄田泣菫 佐紀の村外れから、郡山街道について南へ下ると、路の右手に當つて、熟れかかつた麥の穗並の上に、ぬつとした喜光寺の屋根が見える。 立停つて疲れたやうな屋根の勾配を見てゐると、これまでの旅につひぞ覺えのない寂しい心持になつて來る、どうしたといふのであらう。――今朝奈良を發つて、枚方道を法華寺の邊りで振り返つて見た東大寺の眺めは、譬へやうもない宏大なものだつたが、今の心持はそれとも違ふ。いつだつたかはまた八條村の附近で正面に藥師寺の塔を振り仰いでみた。それはすつきりと調子の整つたものだつたが、今の感じはそれとも異ふ。一口に言つてしまへばそんな歎美の念に充ちたものではなくて、寧ろ衰殘そのものに對ひ合つた寂しい氣持だ。 私は砂埃のかかつた草の上にどつかと腰をおろした。どつちを向いてみても若々しい生命に充ちた初夏の光景のうちに、どこかかう間の拔けたやうな、古い、大柄な屋根ののつそりと突立つてゐるのを見ると、なんといふ譯もなく、いつぞや讀んだツルゲネエフの『親と子』がふと記憶に上つて來た。あの親爺の名はなんとかいつた。確かニコライ・ペトロヰツチ・キルザノフ―ああさうだ、家は段々と左前
薄田泣菫
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