薄田泣菫
薄田泣菫 · japonés
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薄田泣菫 · japonés
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Original (japonés)
魚の憂鬱 薄田泣菫 池のほとりに来た。蒼黒い水のおもてに、油のやうな春の光がきらきらと浮いてゐる。ふと見ると、水底の藻の塊を押し分けて、大きな鯉がのつそりと出て来た。そして気が進まなささうにそこらを見まはしてゐるらしかつたが、やがてまたのつそりと藻のなかに隠れてしまつた。 私はそれを見て、以前引きつけられた支那画の不思議な魚を思ひ出した。 私は少年の頃、よく魚釣に出かけて往つた。ある時、鮒を獲らうとして、小舟に乗つて、村はづれの池に浮んだことがあつた。 その日はどうしたわけか、釣れが悪かつた。私はやけになつて、すぐそこを游いでゐる三寸ばかりの魚を目がけて鈎を下した。そして無理やりに餌を魚の鼻さきにこすりつけようとして、ふと物に驚いて、じつと水の深みを見おろした。 今まで雲のかなたに陰つてゐた春の陽は、急にぱつと明るくそこらに落ちかかつて来た。ささ濁りに濁つた水の中に、青い藻が長く浮いてゐて、その蔭から大きな鯉が、真黒な半身をのつそりと覗かせてゐるではないか。鋼鉄の兜でも被つたやうなそのしかめつ面。人を恐れないその眼の光。私は見てゐるうちに、何だか不気味になつた。 「池のぬしかも知れない
薄田泣菫
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