田中貢太郎
田中貢太郎 · japonés
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田中貢太郎 · japonés
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Original (japonés)
小さくなった雨が庭の無花果の葉にぼそぼそと云う音をさしていた。静かな光のじっと沈んだ絵のような電燈の下で、油井伯爵の遺稿を整理していた山田三造は、机の上に積み重ねた新聞雑誌の切抜や、原稿紙などに書いたものを、あれ、これ、と眼をとおして、それに朱筆を入れていた。当代の名士で恩師であった油井伯爵が死亡すると、政友や同門からの推薦によって、その遺稿を出版することになり、できるなら百日祭までに、伯爵が晩年の持論であった貴族に関する議論だけでも活字にしたいと思って、編纂に着手してみると、思いのほかに時間がとれて、仕事が進まないのでその当時は徹夜することも珍しくなかった。 一時間も前から眼を通していた二十頁に近い菊判の雑誌の切抜がやっと終った。三造は一服するつもりで、朱筆を置き、体を左斜にして火鉢の傍にある巻煙草の袋を執り、その中から一本抜いてマッチを点けた。夜はよほど更けていた。さっき便所へ往った時に十二時と思われる時計の音を聞いたが、それから後は時間に対する意識は朦朧となっていた。ただ時間と空間に支配せられた、頗る疲労し切った存在が意識せられるに過ぎなかった。 雨の音はもう聞えなかった。彼は二
田中貢太郎
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