徳田秋声
徳田秋声 · japonés
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徳田秋声 · japonés
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Original (japonés)
深い雑木林のなかに建てられたバンガロー風の其の別荘へ著いたのは午後の何時頃であつたらうか。彼はこの高原地へ来る途中、初めてそこを通る同行の姉娘と妹娘に、ウスヰ隧道の出来た時のことなどを語つて聞かせた。それは四十年足らずのむかし、彼が初めて東京へ出た時の思出話であつた。同じ文学を志した友人のK君と徒歩でこゝを通つたとき、隧道の難工事に従事してゐる労働者達の荒くれた風貌や関東弁がいかにアムビシヤスな、田舎からぽつと出の二人の幼な青年を驚かしたかを思ひ浮べたりした。荒いウスヰの山や谷々には、木の芽が漸く吹かうとしてゐた。旅客を運ぶ馬車が、喇叭を鳴らして、遠い山裾の道を走つてゐた。 「長野からづつと此の辺を歩いて、高崎から又た汽車に乗つたのさ。」彼は語つたが、それからの長い過去の現実が総て自身にも嘘のやうな話であつた。 「御母さんも家が可けなくなつて、東京へ出るとき馬車で此処を通つたさうだ。」彼は附加へようとしたが、彼女のことは語らないことにしてゐた。 「もう十五通つたわよ。」汽車の長いのに倦んでゐた幼い蝶子が言つてゐた。 別荘には迎へに来てくれたH青年兄妹と祖母とが来てゐるだけであつた。主客
徳田秋声
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