野村胡堂
野村胡堂 · japonés
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野村胡堂 · japonés
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Original (japonés)
「八、良い月だなア」 「何かやりませうか、親分」 「止してくれ、手前が鹽辛聲を張り上げると、お月樣が驚いて顏を隱す」 「おやツ、變な女が居ますぜ」 錢形の平次が、子分のガラツ八を伴れて兩國橋にかゝつたのは亥刻(十時)過ぎ。薄寒いので、九月十三夜の月が中天に懸ると、橋の上に居た月見の客も大方歸つて、濱町河岸までは目を遮る物もなく、唯もうコバルト色の灰を撒いたやうな美しい夜です。 野暮用で本所からの歸り、橋の中程まで來ると、ガラツ八がかう言つて平次の袖を引きました。大した智慧のある男ではありませんが、眼と耳の良いことはガラツ八の天稟で、平次の爲には、これ程誂向のワキ役はなかつたのでした。 「あの女か」 「ありや身投ですぜ、親分」 「人待ち顏ぢやないか、逢引かも知れないよ」 「逢引が欄干へ這ひ上がりやしません、あツ」 橋の上にシヨンボリ立つて居た女、平次とガラツ八に見とがめられたと氣が付くと、いきなり欄干を越して、冷たさうな水へザンブと飛込んで了つたのです。 「八、飛込めツ」 「いけねえ、親分、自慢ぢやねえが、あつしは徳利だ」 「馬鹿野郎、着物の番でもするがいゝ」 さういふうちにパラリと着物
野村胡堂
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