野村胡堂
野村胡堂 · japonés
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野村胡堂 · japonés
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Original (japonés)
「錢形平次親分といふのはお前樣かね」 中年輩の駄馬に布子を着せたやうな百姓男が、平次の家の門口にノツソリと立ちました。 老けてゐるのはその澁紙色に焦けた皮膚のせゐで、實は三十五六をあまり越してゐないかもわかりません。油氣のない髮を藁しべで結つて、月代は伸び放題、從つて熊の子のやうな凄まじい髯面ですが、微笑すると眼尻に皺が寄つて、飛んだ可愛らしい人相になります。 「錢形の親分は奧にゐるよ――俺は子分の八五郎といふものさ」 八五郎はさう言つて、グイと長んがい顎を引いて見せました。 「道理で――」 百姓男は感に堪へた顏をするのです。 「御挨拶だね、何か用事があるのかい」 「江戸開府以來といはれた捕物の名人にしちや、少し變だと思ひましたよ。惡く思はないで下さいよ」 「言ふことが一々丁寧で腹も立てられねえ」 相手が正直過ぎて、八五郎のガラツ八も大たじ/\でした。 「八、何をして居るんだ。お客なら早く取次ぐが宜い」 平次は奧から聲を掛けます。奧と言つても入口の三疊の隣の六疊。首を伸せば、格子の外に立つた客の睫毛も讀めさう。 こんなやり取りがあつて、客の百姓男は漸く中へ通されました。 疊の上へ眞四角
野村胡堂
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