野村胡堂
野村胡堂 · japonés
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野村胡堂 · japonés
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Original (japonés)
「八、大層ソワ/\してゐるぢやないか」 錢形平次は煙草盆を引寄せて、食後の一服を樂しみ乍ら、柱に凭れたまゝ、入口の障子を開けて、眞つ暗な路地ばかり眺めてゐる、八五郎に聲を掛けました。 「今撞つた鐘は、戌刻(八時)でせう」 八五郎はでつかい指を、不器用に折り乍ら、相變らず外ばかり氣にして居るのです。 「それが何うしたんだ」 「五つまでには、來なきやならないんだが」 「誰が來るんだ、借金取か、叔母さんか」 「そんな氣のきかねえ代物ぢやありませんよ」 「叔母さんまで氣のきかねえ代物にされたのか、それぢや新造か年増か、どうせ宵の口から化けて出るエテ物だらう」 平次はからかひ面でした。物騷な江戸の町を、たとへ親分平次の家で落合ふことにしたにしても、若い女の夜の出歩きは、堅氣の者でないことは、餘りにも明かです。 「ところで、今晩は姐さんの姿が見えないやうですね」 八五郎は、キナ臭い鼻の穴を、ひつそりしたお勝手の方へ向けました。其處には、どんな時でも愼ましやかに仕事をしてゐる、平次の女房お靜の、何時までも若々しい姿が見えなかつたのです。 「お袋のところへ手傳ひにやつたよ」 「へエ? 滅多に無いことで
野村胡堂
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