北条民雄
北条民雄 · japonés
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北条民雄 · japonés
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Original (japonés)
霧の深い夜が毎晩のやうに続いた。黒々と打ち続いた雑木林の繁みの間から流れ出して来るかのやうに、それは月光を浴びて乳色に白みながら、音もなく菜園の上に拡がりわたつた。梨畑が朦朧と煙つた白色の中に薄れて行くと、連なつた葡萄棚の輪郭も徐々に融かされて行き、あたりはただ乳白の一色に塗り込められてしまふ。はるか向うの、群がつた木立の中にちらちらと見えがくれする病舎や病棟のあかりも、ぼんやりと光芒がただれて、大地は真白な雲の底に沈んでゐるやうであつた。 さつきから深い物思ひに耽りながら、首を垂れてのろのろと歩いてゐた野村英吉は、湯気を吸ひ込んだ着物のすそにしつとりと重みを感じ、足下から這ひ上つて来る冷気を素足に覚えると、何気なく立停つて空を仰いで見た。月はぼんやりとかげり、霧は幾万の微粒子となつて重なり合ひながら、かなりの速度でゆらめき流れてゐる。彼は暫くの間棒のやうに突つたつたまま霧粒を眺めてゐた。が、ふと、俺はなんだつて突つたつてゐるんだらうといふ疑問がちらと頭をかすめると、また苛立たしいものが心の中に湧いて来て、急いで足を動かし始めた。けれど二三間も歩かぬうちにまたぴたりと足を停めると、俺は
北条民雄
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