牧野信一 · 일본어
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원문 (일본어)
わたしはこの四五年来、少くとも一年のうちに二回以上は、全く天涯の孤独者であるかのやうな、そして深い寧ろ憂ひに閉ぢこめられたやうな姿で独り、登山袋に杖を突いて、遠方の景色にばかり見惚れてゐるかのやうな眼を挙げながら、すたすたとその山峡の村へ赴くのが慣ひである。 行先の村は、名称を誌したところで無駄に過ぎない程度の寒村で、いつもわたしは家族の者に向つても、出掛けの椽先で、遥かの山脈の一角に雲を含んで達磨型にそびえてゐる禿山の方角を、頤でさし、 「――あそこだよ。」 と云ふだけであつた。 何時の場合でも、わたしが如何にも偶然さうに、その出発を決行する間際までは、わたしは、恰度永年の飲酒家や喫煙家が慾望を断念してゐる間のやうに、薄ぼんやりとして、止め度もなく朦朧たる憂鬱を吾ながら弥々持てあました挙句に決つてゐたから、かへつて周囲の者達は厄介な荷を払つたほどのおもひであつた。 「まあ、せいぜい、ゆつくりと落着いて来るが好いよ。用があつたら、手紙で沢山だからね――」 と母は云つた。 「一日でも長い方が好いよ――誰も心配なんてしやしませんよ。」 と妻も元気であつた。このまゝわたしが永遠に戻らなかつた
牧野信一
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