正宗白鳥 · 일본어
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원문 (일본어)
洗足池畔の私の家の向ひは、東京近郊の桜の名所である。私は、終戦の前年軽井沢に疎開して以来十数年間、毎月一度は必ず上京してゐたが、盛りの短い桜時には、一度も来合せたことはなかつた。この頃、こゝに居を定めることになつたので、久振りに花の盛りを朝夕たつぷり見ることが出来た。急速に温くなつたので、見る/\咲揃ふやうになつた。「細雪」のなかの或女性は、花のなかでは何が好きかと訊かれて、「それは桜やわ」と答へた。たべ物としての魚類のうちでは何が好きかと訊かれて、それは鯛であると答へた。日本人としての平均した好みはさういふところなのだらう。瀬戸内海沿岸に生れた私は、幼い時分、最もうまい魚は、鯛の浜焼であると教へられてゐた。捕り立ての鯛を、浜辺の塩がまで蒸し焼きにしたのが、人類最上の美食であるやうに、傍からの入知恵で思はせられてゐた。花は桜であると、子供心に思込まされてゐた。今の私は、三分咲きから五分咲き、満開と、忙しく咲き続け、咲きほこつてゐる一団の桜花を、私の部屋の正面に見ながら、桜は花の王であり、鯛は魚の王であると、早くから教へられたことを思浮べてゐる。そして、これまで見た桜の名所を、次から次へ
正宗白鳥
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