Vol. 2May 2026

Libros

Biblioteca de conocimiento mundial de dominio público

14,981종 중 11,688종 표시

簔虫と蜘蛛

寺田寅彦

簔虫と蜘蛛 寺田寅彦 二階の縁側のガラス戸のすぐ前に大きな楓が空いっぱいに枝を広げている。その枝にたくさんな簔虫がぶら下がっている。 去年の夏じゅうはこの虫が盛んに活動していた。いつも午ごろになるとはい出して、小枝の先の青葉をたぐり寄せては食っていた。からだのわりに旺盛な彼らの食欲は、多数の小枝を坊主にしてしまうまでは満足されなかった。紅葉が美しくなるころに

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簡易銷夏法

長塚節

私の樣に田舍にばかり居て何といつて極つた用もないものには銷夏法抔といふ六かしいことを考える必要もなく隨つて名案もありません只今では少し百姓の方に手を出して居るので氣候が暑く成るに連れてずん/\と氣持のよく成るのが畑の陸稻です大豆の葉の朝風にさわ/\と搖れるのも目が醒めるやうです暇の折には自分の仕付けた畑を何遍となく廻つて歩きます幾ら見ても飽きることが有りませ

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簡潔の美

上村松園

簡潔の美 上村松園 能楽の幽微で高雅な動作、その装束から来る色彩の動き、重なり、線の曲折、声曲から発する豪壮沈痛な諧律、こんなものが一緒になって、観る人の心を打つのです。 その静かで幽かなうちに強い緊張みのある咽び顫うような微妙さをもつのは能楽唯一の境地で、そこは口で説くことも筆で描くことも容易に許されぬところだと思います。 私はよく松篁と一緒に拝見に参りま

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簡略自伝

佐左木俊郎

簡略自伝 佐左木俊郎 明治三十三年(1900)宮城県岩出山町在の中農の家に生まる。当時既にこの層の没落は、全農民階級中最も甚しく、私の家もまたその例にもれず只管に没落への途を急いでいたのであった。それを知って父は急に足掻き出し、奪還策として、山林田畑を売り払っていろいろの事業に手をつけ、失敗に失敗を重ね、却って加速度を与えるの結果となったのであった。――その

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簡約医学史

オスラーウイリアム

過去3世紀のあいだに英語を話す人たちが平均的に働く一生は2倍になった。一部の人たちは現在と同じであって、人によって強く運が良い人たちは長期間にわたり能率の良い労働力を持っていた。しかし一般人の一生は現在の中年になると使い尽くされてしまった。シェークスピア(1564-1616)の時代に50才は立派であった。「由緒あるランカスター家のジョン・オブ・ゴント老(13

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簪を挿した蛇

中谷宇吉郎

石川県の西のはずれ、福井県との境近くに大聖寺という町がある。其処に錦城という小学校があって、その学校で私は六年間の小学校生活を卒えた。たしか尋常六年の時に、明治天皇が崩御されたように記憶しているので、私の小学校時代は、明治の末期に当るわけである。 この町は、子爵の方の前田家の旧城下町であって、その頃の小学校は旧藩主のもとの屋敷をそのまま使ったものであった。そ

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簪につけた短冊

田中貢太郎

日本橋区本町三丁目一番地嚢物商鈴木米次郎方の婢おきんと云うのが、某夜九時すぎ裏手にある便所へ入ろうとして扉をあけると、急に全身に水を浴びせられたようにぞっとして、忽ち頭の毛がばらばらと顔の上へ落ちて来てまるで散髪頭のようになった。婢は悲鳴をあげて隣家の曲淵方へ駈け込むなり、ばったり倒れて気絶してしまった。人びとは驚いて、水や薬などを飲ませて蘇生させ、その訳を

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籔のほとり

牧野信一

どうして此処の座敷の欄間にはあのやうな扇があんな風に五つも六つもかゝげてあるんだらう! 装飾の意味にしてはあくどすぎる! 何となくわけあり気に見えるではないか? それにしてもあれは一体何に使ふものなのだらうか? 扇子には違ひないが、あれを扇子に使ふ者は仁王より他にはあるまい! 樽野は祖母の家に来る毎によくそんなことを思つたことがあるが、別段誰に訊ねようともし

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籠の小鳥

徳田秋声

羊三は山を見るのが目的で、その山全体を預かつてゐる兄の淳二と一緒にこゝへ来たのだつたけれど、毎日の日課があつたり何かして、つひ鼻の先きの山の蔭から濛々と立昇つてゐる煙を日毎に見てゐながら、つい其の傍まで行つて見るのが臆劫であつた。 「山にはこちらから料理人が行つてをりますから、宅よりも御馳走がございますよ。」 嫂は家を出るとき、そんな事を言つてゐたが、その朝

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米国巡回文庫起源及び発達

佐野友三郎

米国巡回文庫起源及び発達 佐野友三郎 明年度より秋田図書館においては巡回文庫を開始し、大館(既設)及び能代、大曲、横手(未設)の四郡立図書館に各弐百円を県税より補助せらるることとなりたれば、秋田図書館は、巡回文庫の駐在所を得べく、郡立図書館は、巡回文庫によりて図書の供給を得べく、彼此相待て地方の知識開発上、その益少からざるべし。殊に巡回文庫は、未だ本邦に例な

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米国の松王劇

岡本綺堂

米国の松王劇 岡本綺堂 白人劇の忠臣蔵や菅原はかねて噂には聞いていましたが、今度米国へ渡って来て、あたかもそれを見物する機会を得ました。わたしがサンフランシスコを夜汽車で出発して、ロスアンゼルスの町に着いたのは三月の十九日で、ホテルに入って新聞を見ると、ハリーウードのコンムニチー・シェーターで松王劇を演じているが、それが非常の好評で一週間の日のべをされるとい

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米川正夫著「酒・音楽・思出」

岸田国士

米川正夫著「酒・音楽・思出」 岸田國士 ロシヤ文学の紹介者として米川正夫氏の名を知らぬ読書子は今日の日本には先一人もゐまいが、其米川氏がどういふ人であり、好んで自ら語るところにはなにがあるかといふことを、まだ知らぬものがあるだらうと思ふ。 氏が三十年来翻訳といふ仕事を続け、益々これが自分に適した仕事だと思ひ込むに至つたといふ理由をこの本の中で氏は述べてゐるけ

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米粒の中の仏様

中谷宇吉郎

ミミーはまだ生れて二月にしかならぬ仔猫であるが、ペルシャ猫の血が混っているということで、ふさふさとした毛並みの綺麗な猫である。毎日ひまさえあれば子供達にぶら下げられて可愛がられるので閉口しているようであるが、感心におとなしい行儀の良い猫である。一番感心なことは、台所の隅に子供達の古いお椀を置いて、それに御飯を入れて置いてやると、いつの間にかすっかり喰べてしま

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お米の話

北大路魯山人

お米の話 北大路魯山人 近頃は以前のように、やれ播州の米がうまいとか、越後米にかぎるとかいうような話はあまり聞かない。ただ米でありさえすればあり難がるご時世ではあるが、しかし以前でも、米の味に詳しいというひとは少なかった。 うまい米といえば、その昔、朝鮮で李王さまにあげるために作っていた米がある。これはすこぶるうまかった。収穫は非常に少ないが、米粒の形もよく

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かわいそうな粉ひきの若いものと小猫

グリムヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール

ある水車ごや(1)に、粉ひきのおじいさんが住んでいました。おじいさんのとこには、おかみさんもいず、子どももなく、若いものが三人奉公しているだけでした。この三人がここになん年かいてからのこと、ある日、おじいさんが若いものに、 「わたしも、としをとってな、ストーブのうしろへすわりたくなったよ。おまえがた、旅にでなさい。それでな、そのみやげにいちばんいい馬をもって

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粉雪

中谷宇吉郎

われわれが日常ちゃんと決まった意味があるように思って使っている言葉の中には、科学的にはその意味が極めて漠然としたものがかなり沢山ある。この数年来雪の研究を始めてみて気が付いたのであるが、その種の言葉の良い例が「粉雪」である。 北海道では、冬の初めと終わり頃には牡丹雪も降るが、真冬の間は殆ど粉雪ばかりであるというような事がよくいわれる。この場合の粉雪というのは

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粋を論じて「伽羅枕」に及ぶ

北村透谷

粋を論じて「伽羅枕」に及ぶ 北村透谷 心して我文学史を読む者、必らず徳川氏文学中に粋なる者の勢力おろそかならざりしを見む。巣林子以前に多く此語を見ず、其尤も盛なるは八文字屋以後にありと云ふべし。彼の所謂洒落本こんにやく本及び草紙類の作家が惟一の理想とし、武道の士の八幡摩利支天に於けるが如く此粋様を仰ぎ尊みたるの跡、滅す可からず。 粋様の系統を討ぬれば、平安朝

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粗末な花束

宮本百合子

粗末な花束 宮本百合子 地震前、カフェイ・ライオンの向う側に、山崎の大飾窓が陰気に鏡面を閃かせていた頃のことだ。 私はよく独りで銀座を散歩した。 尾張町の四つ角で電車を降り、大抵の時交番の側を竹川町の停留場まで行き、そこから反対側に車道を横切って第一相互の下まで行く。天気がよく、西日が眩ゆくもない時刻だとそれからまた尾張町へ戻って電車に乗る。 買物をすること

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粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分) 01 序

条野採菊

今を去る三十年の昔、三題噺という事一時の流行物となりしかば、当時圓朝子が或る宴席に於て、國綱の刀、一節切、船人という三題を、例の当意即妙にて一座の喝采を博したるが本話の元素たり。其の時聴衆咸言って謂えらく、斯ばかりの佳作を一節切の噺し捨に為さんは惜むべき事ならずや、宜敷く足らざるを補いなば、遖れ席上の呼び物となるべしとの勧めに基き、尚金森に充分の枝葉を茂らせ

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マクラウドフィオナ

「マリヤの僕カアル」と呼ばれていたアルトの子カアルは、青い五月のある夜、心にかなしみを持って海のほとりを歩いていた。 それは彼がイオナの島を離れてからまだ間もない時であった。聖コラムはこの青年をアラン島に送るにつけて聖モリイシャに手紙を書いて頼んでやった。聖モリイシャはアランの南端の東むきのくぼみにある小さなピイク島の岸の岩窟に住んでいる聖者であった。カアル

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わが精神の周囲

坂口安吾

わが精神の周囲 坂口安吾 まえがき(小稿の主旨) 私がアドルム中毒で病院を退院したのは、この四月二十日頃であったと記憶する。退院に際して担当の千谷さんから、秋までは仕事をしないように。転地してノンビリ遊んで暮しなさい、という忠告をうけた。私もなるべくこの忠告に従いたいと思ったが、私が鬱病の傾向を起したのは、昨年夏からのことで、それからズッと殆ど仕事をしていな

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精神のへど ――手帳より――

北条民雄

「兄弟よ。汝は軽蔑といふ言葉を知つてゐるか? 汝を軽蔑する者に対しても公正であれといふ、公正さの苦悩を知つてゐるか?」 諸君よ、諸君にこのニイチェの苦悩が判るか? 過去幾千年の屈辱の歴史が、諸君の心臓を掻きむしりはしないか。諸君の心臓は破れはしないのか。諸君はまだ青空が見えるものと信じてゐるのか? 何処にも青空などありはしないのだ。 兄弟諸君よ、君は君の足下

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「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察」自序

呉秀三

精神病者ハ自カラ知ラズ自カラ救フ能ハザル疾患ニ罹リ、其境遇ニ於テ最愍ムベキモノタルノ一方ニ於テ、社會ノ秩序ヲ危クシ公衆ノ安寧ヲ破ラントスル危險ナル證状ヲ呈スルモノナレバ、一面之ヲ救濟シ一面之ヲ保護スルハ、吾人ノ責任ニシテ又吾人ノ義務ナリ。而カモ斯ノ病タル決シテ不治ノモノニアラズ。之ヲ恰好ノ時機ニ於テ入院セシメ、適當ノ治療ヲ加フルナラバ、其治癒スベキモノヽ尠カ

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精神病覚え書

坂口安吾

精神病覚え書 坂口安吾 一ヶ月余の睡眠治療が終って、どうやら食慾も出、歩行もいくらか可能になったころ、まだ戸外の散歩はムリであるから、医者のフリをして、ちょッと外来を見せて貰った。幸い僕の担当が外来長の千谷さんであったから、有無を言わさず、僕が勝手に乗りこんだようなものであった。 ほかの精神病院のことは知らないが、東大に関する限り、ここが精神病院の何より良い

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