牧野信一 · 일본어
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원문 (일본어)
今年になつて――。 四月――鞄を一つぶらさげて、三崎、城ヶ島のあたりを独りでさ迷つてゐた。随筆風のものを折々書いてゐたが、どうしても短篇小説を一つその月ぢうに書きあげなければならぬと力んで、こつこつと夜を更してゐたが何としても捗らなかつた。無理矢理に書きかけたものを読み返して見ると、見るまでもなく沮喪したもので、いつかな発表の勇気が持てなかつた。わたしだつてもう十何年も文筆生活を続けてゐるので、別段に大それた自負を抱くといふほどのこともなかつたが、わたしは何んな場合でも、表面的な出来事は一先づ目をつむるとしても、何時もその作品として、その作としてのかたちをかりぬ限りは絶対に云ひ得べくもない明瞭なる一個の意志が働かぬ限り、決してものにならなかつた。それが働いてゐなかつた。書き直しても駄目だつた。所詮破棄しなければならぬと決心するのであつたが間もなく二十日が過ぎ、三日、四日と経つて、そこここに滞在費が三月以来溜つてゐることなどを考へると、急に心臓が半鐘のやうに鳴り出し、夜々、その未定稿をつかんで、恰も芝居の忠兵衛さん見たいな煩悶に逆上せた。窓から見あげる灯台の光を仰いで沁々と灯台守が羨望さ
牧野信一
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