Vol. 2May 2026

도서

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14,981종 중 11,184종 표시

眼鏡

小川未明

かず子さんが、見せてくれた紅い貝は、なんという美しい色をしていたでしょう。また、紫ばんだ青い貝も、海の色が、そのまま染まったような、めったに見たことのないものでありました。 「ねえやが、お嫁にいくので、お家へ帰ったのよ。そして、私に送ってくれたのよ。図画の先生が、ほしいとおっしゃったから、私いくつもあげたわ。」と、かず子さんが、いいました。正吉は自分もほしい

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のぞき眼鏡

土田耕平

村の鎮守さまのお祭で、さま/″\の見世物がかゝつてゐました。その中に、のぞき眼鏡の掛小屋があつて、番台の男が、 「さあ坊ちやんがた、一銭銅貨一枚で、ゆつくりのぞくことができますよ。」 とにこ/\顔で子供たちをあつめてをりました。 村の男の子たちは、お母さんからいたゞいたお小遣ひの中から、一銭づつ出して、のぞき眼鏡を見ました。太郎さんもその時、よその男の子たち

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着物雑考

林芙美子

着物雑考 林芙美子 袷から単衣に変るセルの代用に、私の娘の頃には、ところどころ赤のはいった紺絣を着せられたものですが、あれはなかなかいいものだと思います。色の白いひとにも、色の黒いひとにも紺の絣と云うものはなかなかよく似合ったもので、五月頃の青葉になると、早く絣を着せてくれと私はよく母親へせがんだものでした。洗えば洗うほど紺地と白い絣がぱっと鮮かになって、そ

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睡眠

仲村渠

絵具は雄弁にねむつてゐる 一水夫は港を想ふ夜! 珊瑚は沈んでゐる 夜。海のそこに朱 帆は死んでゐる 夜。帆桁に白 貨物船は錆びてゐる 夜。港のすみに黒 商店旗は垂れてゐる 夜。街上に紫 飛行機は休んでゐる 夜。広場で青 駝鳥の卵は焦つてゐる 夜。飾窓で黄 仮面は生きてゐる 夜。劇場の壁に赤 おれは睡つてゐる 夜。街裏に紅 女は湿つてゐる 夜。地上いちめん蒼

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瞳人語

田中貢太郎

瞳人語 田中貢太郎 長安に、方棟という男があった。非常な才子だといわれていたが、かるはずみで礼儀などは念頭におかなかった。路で歩いている女でも見かけると、きっと軽薄にその後をつけて往くのであった。 清明の節の前一日のことであった。たまたま郊外を歩いていると、一つの小さな車がきた。それは朱の色の戸に繍のある母衣をかけたもので、数人の侍女がおとなしい馬に乗って蹤

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瞼の母

長谷川伸

〔序幕〕第一場 金町瓦焼の家(春) 第二場 夏の夜の街(引返) 第三場 冬の夜の街 〔大詰〕第一場 柳橋水熊横丁 第二場 おはまの居間 第三場 荒川堤(引返) 番場の忠太郎  夜鷹おとら  洗い方藤八 水熊のおはま  素盲の金五郎  煮方子之吉 その娘お登世  鳥羽田要助  出前持孫助 金町の半次郎  突き膝喜八   女中おふみ 半次母おむら  宮の七五郎 

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矛盾の様な真実

梶井基次郎

矛盾の樣な眞實 梶井基次郎 「お前は弟達をちつとも可愛がつてやらない。お前は愛のない男だ。」 父母は私によくそう云つて戒めた。 實際私は弟達に對して隨分突慳貪であつた。彼等を泣かすのは何時でも私であつた。彼等に手を振り上げるのは兄弟中で事實私一人だつた。だから父母のその言葉は一應はもつともなのであるが私は私のとつてゐた態度以外にはどうしても彼等が扱へなかつた

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「矜り」と「嗜み」

岸田国士

問題はいはゆる国民錬成の効果についてといふのであるが、私はこの錬成といふ意味を、特定の団体なり機関なりが、その企画として一定数の人員を集め、ある方式によつて一定期間錬成を施すといふ、そのことだけに限らず、時局そのものの必然的な圧力が、むしろ一種の指導的、推進的な作用となつて、国民全体の自覚と発奮を促し、そこに期せずして「錬成」の実を挙げてゐるといふ、そのこと

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矢はずぐさ

永井荷風

さる頃も或人の戯にわれを捉へて詰りたまひけるは今の世に小説家といふものほど仕合せなるはなし。昼の日中も誰憚るおそれもなく茶屋小屋に出入りして女に戯れ遊ぶこと、これのみにても堅気の若きものの目には羨しきかぎりなるべきに、世の常のものなれば強ひても包みかくすべき身の恥身の不始末、乱行狼藉勝手次第のたはけをば尾に鰭添へて大袈裟にかき立つれば世の人これを読みて打興じ

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矢代静一君を推す

岸田国士

矢代君の戯曲は以前二つほど読んでゐた。それに今度文学座のアトリエ公演でこの、たしか第三作である「城館」を観て、この作者もいよいよこんなものを書きだしたな、と思つた。といふ意味は、前の二作だけではまだまだ、劇作家矢代静一の特色も真価もはつきりしなかつたからである。 今度の「城館」は、非常に新鮮で彼の豊かな才能の開花がはじめて告げ知らされたやうな気がした。 私は

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矢田津世子宛書簡

坂口安吾

矢田津世子宛書簡 坂口安吾 御手紙ありがたく存じました。御身体御大切に。身体が弱ると、思想が弱くなるのでいけません。 小生、今月始めから漸く仕事にかかりました。この仕事を書きあげるために命をちぢめてもいいと思っています。今の仕事は、存在そのものの虚無性(存在そのものの、と言うよりほかに今のところは仕方がないのですが)を知性によって極北へおしつめてみようとして

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矢立のちび筆

永井荷風

或人に答ふる文 思へば千九百七、八年の頃のことなり。われ多年の宿望を遂げ得て初めて巴里を見し時は、明くる日を待たで死すとも更に怨む処なしと思ひき。泰西諸詩星の呼吸する同じき都の空気をばわれも今は同じく吸ふなり。同じき街の敷石をば響も同じくわれも今は踏むなり。世界の美妓名媛の摘む花われもまた野に行かば同じくこれを摘むことを得ん。われはヴェルレエヌの如くにカッフ

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知られざるアメリカ

中谷宇吉郎

一九五二年の夏、家族をつれてアメリカへ渡り、二年あまり、シカゴの郊外に住んでみた。アメリカは、それまでに、二回訪ねたことがある。しかし家庭をもった普通のアメリカ人の生活というものを経験したのは、これが初めてである。 外国の姿は、その土地に一応住みついて、いわゆる家庭づき合いをしてみないと、なかなかわからない。二年くらいの経験では、もちろん足りないが、それでも

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知らない人

太宰治

ことしの正月は、さんざんでありました。五日すぎから、腰の右方に腫物ができて、粗末にしてゐたら次第にそれが成長し、十五日までは酒を呑んだりして不安の氣持をごまかしてゐましたが、たうとう十六日からは、寢たつきりになつてしまひました。惡寒疼痛、二、三日は、夜もろくに眠れませんでした。手術は、いやなので無二膏といふ膏藥を患部に貼り、それだけでも心細いので、いま流行し

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知多の野間で

田山花袋

知多半島の東浦から西浦に越えて行く路は、今までにないほどの興味を私に誘つた。『知多半島ツて、こんなところかなア、こんなに面白い地形とは思はなかつた』私はかう独語した。 私は東浦の河和から車で越した。低山性の複雑した丘陵が、時には東を開き、南を開くといふやうな形を見せてゐたが、次第にのぼるにつれて、北も西もすつかり眼中に落ちて来た。その地平線の濶さ! 東浦も見

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知々夫紀行

幸田露伴

知々夫紀行 幸田露伴 八月六日、知々夫の郡へと心ざして立出ず。年月隅田の川のほとりに住めるものから、いつぞはこの川の出ずるところをも究め、武蔵禰乃乎美禰と古の人の詠みけんあたりの山々をも見んなど思いしことの数次なりしが、ある時は須田の堤の上、ある時は綾瀬の橋の央より雲はるかに遠く眺めやりし彼の秩父嶺の翠色深きが中に、明日明後日はこの身の行き徘徊りて、この心の

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知己の第一人

長塚節

私が伊藤君に會つたのは、丁度明治三十三年の四月の一日でした。子規先生の根岸庵短歌會の席上でした。三月の下旬に始めて根岸庵を訪問して四月の一日に伊藤君に會つたのでした。が其の時は別段談話を交換することも無かつた。それから二三日經つて私が伊藤君を訪問しました。折よく居まして種々話をしましたが、其の時私の言つた事を非常に喜んでくれた事が今でも明かに耳に殘つて居りま

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こわいことを知りたくて旅にでかけた男の話

グリムヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール

あるおとうさんが、ふたりのむすこをもっていました。にいさんのほうはりこうで、頭がよくて、なんでもじょうずにやってのけました。ところが、弟のほうときたら、まぬけで、なんにもわからないし、なにひとつおぼえることもできないというありさまでした。ですから、弟の顔を見るたびに、だれもかれもこういうのでした。 「こういうむすこがいたんじゃ、おやじさんはいつまでたってもた

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知られざる漱石

小宮豊隆

漱石先生の面會日は毎週木曜日だときまつてゐた。木曜の晩には、きまつて大勢の弟子が集まつた。我我はこれを木曜會と名づけて、その常連をもつて任じてゐた。その木曜會の歴史のやうなものを、ここに書いて見ようと思ふ。 鈴木三重吉によると、先生に面會日をきめさせたのは、三重吉だつたのださうである。先生が訪問客が多くて困ると言つてゐたので、それなら面會日をおきめなさい、就

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知的作用と感情と

増田惟茂

知的作用について吾々は二つの方面を區別する事が出來る。一つは働き、又は機能であつて、他は意識内容である。見る、聞く等の樣な知覺の働は前者であり、色、形、音等感覺とか知覺表象とか云はれるものは後者である。想起、想像、思考等は前者であり、記憶像、想像に浮べるもの即ち想像表象、概念等は後者である。 其内前者即ち心的働きの方は無視される傾がある。私はこれを心的働きの

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知らずや肝の美味

北大路魯山人

魚類の肝にはなかなか美味いのがある。鳥の肝にもあるにはあるが、さかなの肝の美味さには遠く及ばない。獣の肝には、これは美味いと感じたことがない。さかなの肝で特に美味いのは、たい、はも、かわはぎ、ふぐ、あんこう、うなぎ、たら。鳥では、フランスのフォアグラ(鵞鳥の肝)が有名で、私も瓶詰を知っているが、事実全く美味い。日本の鳥の肝には、とりわけ美味いというほどのもの

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知識と政治との遊離

中井正一

知識と政治との遊離 中井正一 現在往々にして、知識層が政治に期待を失って、その行動の方向を失わんとしつつあると伝えられている。それは敗戦再出発の歴史的瞬間にある日本民族にとって、寒心すべき事態であるといえよう。 何故、知識層が、政治より絶望し、遊離し、やがて現実そのものも自棄的に放擲するような事となるのであろうか。案外その理由と歴史は深くかつ遠いのであるまい

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