岸田国士 · 일본어
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원문 (일본어)
田巻安里は、甚だコーヒーをたしなんでゐた。彼は、朝昼晩、家にあつても外にあつても、機会を選ばずコーヒーを飲んだ。友人と喫茶店にはいり、「君はなに?」と問はれゝば、「無論コーヒーさ」と空うそぶき、コーヒーさへ飲んでゐれば、飯なんか食はなくてもいいと放言した。 だれも、彼がコーヒーをたしなむことに偽りがあるとは思はなかつた。たゞ、敏感な友人は、彼がコーヒーをたしなむことは、寧ろ「コーヒーをたしなむこと」をたしなむに近いと思つてゐた。 そこで問題になるのは、コーヒーそのものがある人のし好に適ふ理由は明瞭であるが、「コーヒーをたしなむこと」が、何故にし好愛着の目的物となり得るかである。 殊に、田巻安里の場合、不思議に思はれる現象は、コーヒーをたしなむかの如く見えて、その実、コーヒーそのものに対する感覚を多分に失つてゐるらしいことである。たゞそればかりではない。まれには、コーヒーを飲むことが、一種の苦痛になつてゐるとしか思はれないことである 少しうがつた観方をすれば、彼は、コーヒーを味はふ時よりも、「おれはコーヒーが好きだ」と思ひ、かつ、人からさう思はれることの方が楽しいのである。それゆゑに彼は

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