牧野信一 · 일본어
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원문 (일본어)
春来頻リニ到ル宋家の東 袖ヲ垂レ懐ヲ開キテ好風ヲ待ツ 艪を漕ぐのには川底が浅すぎる、棹をさすのには流れが速すぎる――そのやうな川を渡るために、岸から岸へ綱を引き、乗手は綱を手繰つて舟をすすめる、これを繰舟の渡しと称ふ。 その娘の家の裏門は川ふちに開いて、繰舟で向ふ岸の街道に渡つた。橋は見霞む川下の村境ひのはてであつたから、その繰舟はあたりの人々にとつてもこのうへもない近みちであつた。 「春来頻到――」 離室の書院のに読める雄揮な文字を指差して娘は、わらひ、 「こんな言葉までが苦しくなるわ、とり換へてしまはうかしら――」 と、もう涙をためてゐた。「こんど来る時には、メンデルスゾンのものを買つて来てね、いつそ愁しい方が慰めだわ、新しい、騒々しいのは厭……」 「袖ヲ垂レ……か。」 青年も口吟んで、胸が溢れた。学生時分の洋服姿を止めさせられて、田舎に戻つてゐる娘は島田を結はされ、紫地に大矢羽根絣の長袖を着て、画に見る御殿女中のやうに立矢ノ字に帯を結んでゐた。青年が訪れると、その書斎の、竹筒のラムプを二つにして、二人は夜更まで語らつた。――彼が思はず頬をおしつけようとすると、 「駄目、未だ駄目…
牧野信一
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