岡本綺堂
岡本綺堂 · 日语
岡本綺堂 · 日语
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原文 (日语)
一 「また怪談ですかえ」と、半七老人は笑った。「時候は秋で、今夜は雨がふる。まったくあつらえ向きに出来ているんですが、こっちにどうもあつらえむきの種がないんですよ。なるほど、今とちがって江戸時代には怪談がたくさんありました。わたくしもいろいろの話をきいていますが、商売の方で手がけた事件に怪談というのは少ないものです。いつかお話した津の国屋だって、大詰へ行くとあれです」 「しかし、あの話は面白うござんしたよ」と、わたしは云った。「あんな話はありませんか」 「さあ」と、老人は首をかしげて考えていた。「あれとは又、すこし行き方が違いますがね。こんな変な話がありましたよ。これはわたくしにも本当のことはよく判らないんですがね」 「それはどんなことでした」と、わたしは催促するように云った。 「まあ、待ってください。あなたはどうも気がみじかい」 老人は人をじらすように悠々と茶をのみはじめた。秋の雨はびしゃびしゃというような音をたてて降っていた。 「よく降りますね」 外の雨に耳をかたむけて、あたまの上の電燈をちょっと仰いで、老人はやがて口を切った。 「安政四年の正月から三月にかけて可怪なことを云い触ら
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