漢那浪笛 · 日语
全文
原文 (日语)
うら若かき頃の、悲しきあこがれ………
草葉の息ふきかへす甘き香り、
艶はしき花の笑ひもながめて過ぎぬ、
木の間にさへずる、鳥の歌をきゝ、
悲しみは眼を閉ぢて、暫時やすらひもせし、
されど、とく新らしき悲しみに転りぬ、
何をもて、この闇を照さむ、
空を仰げば恐ろし………
いざさらば、独り琉球節の一曲を、
口笛にふるわせ、
うらやすき墓場のほとりにさ迷はむ、
そは音なき響きを(聞)かんとや………
わが思ふ女のありやなしや、
まよはしきかな、
夕暮の窓にもたれて、蒼白き息ふくわれも、
またありやなしや、
あなうたがはし、
蚊のなく声を、君が悲しき唄とやきかむ、
柔風の木の葉にすがる、たはふれを、
君が、鬢のほつれもやきかむ、
淋しき夕べの鏡もきこゆ、――
森の彼方、君住む墓のほとりにやはあらむ、
今なり! われは独りさ迷ひゆかむ………
夕べの鐘をしたひて、
その音に耳を沈めて。
なつかしい丘の上、
棕梠の若葉のそよぎ、小鳥の歌、
傾むきつくす夕陽も、
見る/\最後の接吻をのこして、
深い/\海の彼方へ去らうとする、
なつかしい丘の上に、Kの君を待つ心よ!
夢を語るやうな暮の風に顫へる、
葉づれの音に眼が狂へば、
西へ東に、足が動きだす………
夫れと思ふ俤が、更に眼にとまらぬ、
胸を抱いて、深い悲しみに沈む、
林の間に、夜の色が浮び出した………
黒ろい恐ろしい影は、
私の魂を圧しはじめる、
もう是れが私の、Kの君に対する最後だ!
●図書カード
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