木下利玄
木下利玄 · 日语
木下利玄 · 日语
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原文 (日语)
山陰と云つても、東は丹後但馬から西は石見に及んでゐて、區域が廣いからさし當りここでは、但馬の城崎附近を書いて見よう。 又歌になる所と云つても、好い眼さへ持つてゐれば、何處にも詩は見出されるのだから、今は私に興味があつた處をあげてゆくに止める。 城崎温泉 城崎の町は、山陰線が北上して、日本海の海岸へ出ようとする一里ばかり手前で、西へ折れてゐる、其曲り角の處に當つてゐる。 私がここへ行つたのは、大正五年六月の梅雨季だつた。京都から、午後の汽車で立つたが、丹波の國の山間を通過して、だんだん北の方へと走るのは、非常に淋しい氣持だつた。 螢の飛びちがつてゐる峠路や、寂しい停車場前の小さい旅館の灯、大江山へ何里などと書いてある驛の名所案内の白い札、踏切に待つてゐる田植歸りの百姓の家族、山際の殘照、月見草の花、それらが車窓から私のセンチメンタルになつた心に映つて、過ぎて行つたのを今でもはつきり思ひ出す。 その淋しさが極つた頃、城崎驛へついて、俥で狹い明るい町を、四五町宿やへ曳かれて行つたが、一種の物珍らかななつかしい印象を受けた。其狹い町の兩側の温泉宿の、細格子のはまつた二階三階の明るい燈火や土産物
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