佐左木俊郎
佐左木俊郎 · 日语
佐左木俊郎 · 日语
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原文 (日语)
接吻を盗む女の話 佐左木俊郎 一 街裏の露地で 社は五時に退けることになっていた。 併し、鈴木三枝子は大抵の日を六時か六時半まで社に残るのだった。別に仕事はしなくてもタイム・レコードで居残り割増金をくれることになっているからだった。 鈴木三枝子は、昼の仕事をなるべく残すようにして置いて、居残りの時間をつくるようにした。地方の読者への勧誘状を書いたり、問い合わせに対する返事を書いたりして、彼女はどうかすると、八時頃まで残ることさえあった。 或る出版会社に勤める彼女の僅かばかりの月給では、夫の失職中、そうでもしなければ、一家の生活を支えてゆくことがとても出来ないのだった。 その日も三枝子は七時まで社にいた。日曜の前日という気持ちから、余計に働いて帰るつもりなのだった。 社を出るときには、電燈の光がなければもう暗かった。彼女はそれから市ヶ谷見付に出て、新宿までは省線、それから京王電車で初台まで行くのであったが、満員の電車は、十時間あまりの労働でひどく疲れている彼女の上に、なお同じほどの疲労を押し付けずには置かなかった。 彼女の家は停車場から六七町ほどのところにあった。そこで、彼女の、今年四つ
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