橘外男
橘外男 · 日语
橘外男 · 日语
首段预览
原文 (日语)
逗子に了雲寺という天台宗の寺がある。詳しく言えば、逗子とは言ってもここは田浦との中間地点、むしろ田浦の方に位していると言った方がいいのかも知れぬが、東京からの避暑客などは道の遠いのとあまりにも物淋しいのとで、ほとんど顧みる人もいなかった。 田越川に沿うて神武寺を左に眺めつつ三崎街道の埃っぽい道をどこまでもどこまでも伝わって行くと、やがて小一里近く道は二股に分れて、一つはその埃っぽい道を左の方へ単調に続けて行き、一つは石礫の多い山坂道を右の方へと分け入って行く。 了雲寺というのはこの右の方へ山ふところを分け入ったところにあったが、行くこと更に七、八町、道は再び豁然として開け、やがて左側の大きな欅の樹陰に色褪せた旗を立てて一軒の百姓家が往来も稀れな通行人のために草鞋三文菓子なぞを商っている前へと出る。そのすぐ向うからもう長々とした石段の入り口になって、そこには不許葷酒入山門と六朝風な字で彫った古い苔むした自然石が倒れ掛かっていた。そして胸を衝くような長い石段が――こんな名もない田舎寺には勿体ないような長いじめじめとした石段が見上げるような頭上の山の頂に列なっていて、深々と山を掩った昼なお暗
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