豊島与志雄
豊島与志雄 · 日语
豊島与志雄 · 日语
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原文 (日语)
初秋海浜記 豊島与志雄 仕事をするつもりで九十九里の海岸に来て、沼や川や磯を毎日飛び廻ってるうちに、頭が潮風にふやけてしまって、仕事はなかなかはかどらず、さりとて東京へ帰る気もしないで、一日一日をぼんやり過してるうちに、もういつしか初秋になっていた。 潮風に頭のふやけた気持は、丁度軽い熱が発したのに似ている。夏の太陽の直射と温風とに、皮膚が赤黒く焼かれると、そのひりひりした熱っぽい感じが、筋肉の内部にまで浸み透って、身体中が熱いぽってりとした重みで意識される。頭もやはり同じである。何とのう頭脳のしんの方が熱っぽく、重くどんよりと濁り淀んで、一切の冴えと敏活さとを失ってしまう。 そういうところに、ふいと初秋の気が感じて、私は眼覚めたような心地になった。初めはただ、葦の茂みをさらさらと渡る凉風だったが、それに気付いて見廻すと、空の色、海の色、蝉の声、虫の声、凡てが秋の気を帯びていた。そして、海浜の松林の中に孤立した旅館では、滞在客がいつのまにか帰り去ってしまって、家の人以外には、私一人置き忘られたように、ぽつねんと居残ってるのだった。 広々とした平地の海浜には、夕方の薄明がない。日のあるう
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