
豊島与志雄 · 日语
豊島与志雄 · 日语
首段预览
原文 (日语)
野ざらし 豊島与志雄 一 「奇体な名前もあるもんですなあ……慾張った名前じゃありませんか。」 電車が坂道のカーヴを通り過ぎて、車輪の軋り呻く響きが一寸静まった途端に、そういう言葉がはっきりと聞えた。両腕を胸に組んで寒そうに――実際夕方から急に冷々としてきた晩だった――肩をすぼめていた佐伯昌作は、取留めのない夢想の中からふと眼を挙げて見ると、印半纏を着た老人の日焼した顔が、髭を剃り込んだをつき出し加減にして、彼の横から斜上の方を指し示していた。其処には、車掌と運転手と二つ並んだ名札の一つに、木和田五重五郎という名前が読まれた。 「私はこれで日本六十余州を歩き廻ったですが、こういう名前に出逢ったなあ初めてでさあ。ゴジューゴロー……何とか読み方があるんでしょうが……慾張った名前ですな。私は七十になりますがね……。」 そのいやに固執した「慾張った」のすぐ後へ、七十という年齢が突拍子もなく飛出したので、昌作は知らず識らず笑顔をした。 「八十八という名前もあるじゃないか。」 「そいつあ世間にいくらもありまさあ、ヤソハチというんでね。」 「もっと上にゆくと、八百八というのがあるよ。」 「へえ? 八百
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